「まるで試合に負けたかのように、鹿島の選手に笑顔が見られなかったその訳は・・・」天皇杯 準決勝 鹿島アントラーズ

両チームのシュート数が14対6、ボール支配率が6割対4割と、データの数値上は横浜Fマリノスが圧倒した天皇杯の準決勝だったが、試合を見た人にとっては鹿島アントラーズの強さばかりが印象に残ったのではないだろうか。

試合の前半は完全に横浜のペース。鹿島は伝統の4-4-2でゾーンをセットするのだが、SBの位置取りが不用意に高く、そのくせマークに行くのかゾーンを埋めるのか曖昧になっていて、横浜に裏のスペースを何度も使われてしまっていた。

横浜は鹿島の守備を研究していて、ウイングの齋藤学やマルティノスがトップ下の前田と連携してポジションを頻繁に変えてマークを外し、1トップの富樫がゾーンの間に降りて基点となり、何度もサイドから決定機を演出した。

しかし鹿島はフリーでシュートを打たれそうな場面でも必ず最後まで諦めずに体を投げ出していたため、齋藤や富樫がそれを気にしてシュートを吹かせたり、GK曽ヶ端がシュートのコースを読みやすくする効果が出ていた。

逆に、前半41分に柴崎のクロスを土居がヘディングで決めた鹿島の先制点では、中澤のポジショニングとGK榎本の予測の甘さが見られ、ここぞという場面での守備の集中力、経験で鹿島が横浜をはっきりと上回っていた。この辺は、クラブW杯で世界と戦った上での経験がものを言ったところだろう。

それは攻撃のディテールでも違いが見られ、横浜は攻め込んでいるんだけど、ドリブルからシュート、パスからクロスと最後の2プレイが狭く短く単調で、鹿島にとっては読みやすい攻撃になっていたのに対し、鹿島の2ゴールはボールを奪ってから躊躇なく走る柴崎に長いボールが渡り、そこからダイレクトで決めたもので、展開が大きく早い攻撃に横浜の守備が戻りきれてないうちに攻め切っていた。

何より印象的だったのは、試合が終わった後の鹿島の選手に、まるで負けてしまったかのごとく笑顔が見られなかった点である。再びクラブW杯でレアルにリベンジを果たすまでは、こんなところで躓いているわけにはいかない、天皇杯でさえ単なる通過点に見なしてしまう彼らの意識の高さや自信が、横浜Fマリノスとの目に見えない大きな差だったのかもしれない。