「王者フルーム、まさかの下り奇襲アタックで先制パンチ」ツール・ド・フランス2016 第6~7ステージ

早くもピレネー山脈山岳ステージに突入した今年のツール・ド・フランス。

しかし第7ステージは終盤に1級アスパン峠がある中級山岳、第8ステージは中盤に超級ツールマレー、後半にペイルスルドなどお馴染みの1級山岳が2つ続く本格山岳ステージながら、どちらも峠を下りきってのゴールでアシストが揃っていると勝負が付きにくく、まだ大きな動きは無いのではないかと思われました。

実際、第7ステージは残り27km地点からクミングスが独走アタックを仕掛け、そのまま集団に3分37秒のタイム差を付けてゴール、エース連中を含む集団の中は大きな動きが無く終わったのですが、第8ステージで優勝本命のクリス・フルームがまさかの奇襲に出るとは驚きましたね。

最後のペイルスルド峠でアシストを4人残しているチームスカイが盤石の体制でペースを上げ、ライバルチームのアシストを次々にふるい落とすと、頂上まで残り3kmを切った地点からキンタナらがアタックを仕掛け、ここでコンタドールが集団から脱落。しかし逃げが決まらずこのまま集団で下るのかと思われた矢先、頂上付近でクリス・フルームがいきなりのアタックを仕掛けました。

これにキンタナらライバル勢はすぐに反応できず、下りに入った時には数秒の差が出来てしまいました。ここでフルームは、このステージのために準備したアウター54Tというスプリンター並のフロントギアを、サドルから腰を落としてトップチューブの上に乗るという不安定な姿勢でグイグイ回して逃げます。

キンタナらライバルも必死で追いすがりますが、ここでスカイのアシストは彼らの後ろにぴったり付いてスリップストリームを活かして追撃のペースを狂わせ、フルームとの差がジリジリと広がって行きます。集団は最後に何とか差を詰めるものの、最後は13秒の差でフルームが逃げ切り。今大会初勝利を飾ると同時に、ボーナスタイム10秒を含めた30秒近い差を広げ、早くもマイヨ・ジョーヌを獲得する結果になりました。

それにしても、フルームの最大のライバルであるキンタナを擁するモビスターチームにとっては、ダブルエースになり得るバルベルデがアシストにいながら下りでフルームに差をつけられたのはショックが大きいところでしょう。

今日のステージは、いよいよ超級山岳アルカリスを登り切っての頂上ゴール。今大会で最初の大きな勝負どころです。フルームの先制パンチを浴びせられたライバルたちが、ここでどんな反撃に出てくるのか本当に楽しみです。