「伝統国が新興国に戦術で負ける時代は、ヨーロッパも日本のアジアも同じ」EURO2016 グループB ロシア-スロバキア

ユーロも昨日からグループリーグ第2戦に突入。初戦でイングランドと土壇場で引き分けたロシアと、ウェールズに負けたスロバキアが対戦した。

代表チームは戦術意識を統一させる時間が少ないため、バイエルンのドイツやユベントスのイタリアのように、同じクラブの選手を多く起用する事でカバーする方針が最近は良く見られるが、ロシアも選手のほとんどがCSKAモスクワとゼニトから選ばれており、監督もあの”貧乏揺すり”スルツキーがCSKAの監督と兼任しているようだ。でもCSKAのエースであるジャゴエフは怪我のため大会を欠場。

ただ、スルツキー監督は本田がいた当時のCSKAモスクワでの試合を見ても、明らかに戦術を駆使するような監督ではなく、この試合を見てもフォーメーションこそ4-2-3-1ではあるが、あまりゾーンを圧縮して動かすような組織だったものは無く、選手個人個人がバランスを取ってコンビネーションで守っている感じだった。

対するスロバキアは4-1-4-1で、縦横ともにかなりコンパクトに守る形。4-4のコンパクトな守備ブロックへの対策として、最近はWBをワイドに張らせた3バックなど、スペースが出来るゾーンのファーサイドを狙う攻撃戦術が浸透しつつあるが、スロバキアはロシアのサイド攻撃にはSBがマークに行き、その動きでCBとの間に出来たスペースはインサイドハーフが降りる形で対応していた。

スロバキアのインサイドハーフは、ミランのクツカと、ナポリの中心選手であるハムシクが務めており、彼らが攻守に幅広く動いて絡むことが戦術の肝で、前半32分にスロバキアが奪った先制点も、ハムシクが低い位置から蹴ったロングボールから、ヴァイスが切り返しで2人の選手を置き去りにして決めたもので、前半終了間際の2点目は、ショートコーナーから切れ込んだハムシクによるスーペルゴラッソで、結果的にはハムシク1人でやられた格好であった。

が、1点目の場面を見ると、ロシアのボランチはロングボールに全く反応できておらず、ヴァイスが切り返しをしている間にも追いつけていない。中盤が常にDFラインの近くにいて守備のサポートをしているスロバキアと実に対照的なシーンであった。

ただスロバキアも後半になると疲れのせいかラインが上げられなくなり、ロシアの猛攻を受けるようになってしまう。そして後半35分にロシアが1点を返すのだが、この場面を見るとサイドでボールを持ったスモロフにSBが対応に行くのだが、CBとの間に入り込んだシャトフを中盤がマークに行けず、ワンツーからのクロスを許してしまった事が原因だった。前半に出来ていたカバーリングが終盤には出来なかったというわけである。

その後はロシアが4本のシュートを放つものの最後までスロバキアゴールは割れず、試合は2-1でスロバキアが勝利。ロシアは2戦で勝ち点1と、グループリーグの突破が非常に厳しい立場になってしまった。勝ち点3を得たスロバキアの最終戦はイングランド。もしイングランドが今日行われるウェールズとの試合で勝てないと間違いなく死闘になるだろう。

それにしても、今大会のユーロはこのスロバキアも含め、フランスに健闘したアルバニア、ポルトガルに引き分けたアイスランドなど、中堅以下の国や新興国が大健闘している。逆にロシアやトルコといった伝統国が苦戦という図式がはっきりして来た。そのポイントとしては、やはり伝統国が戦術的にあまり代わり映えしていないのに対し、新興国は新しい戦術を積極的に取り入れているという部分にあるような気がする。そしてそれは欧州だけでなく、凋落しきったブラジルや、ベトナムやタイに戦術で遅れを取っている日本にも当てはまるのではなかろうか。