「結果は大差だったけど、クォリティ的には僅差だった」高校サッカー選手権 決勝 東福岡-国学院久我山

埼玉スタジアムに54090人という満員の観客を集めた高校選手権の決勝、東福岡対国学院久我山の試合は、結果的に5-0とスコアの上では東福岡の圧勝に終わってしまったが、サッカーの内容的には東福岡の準決勝よりも拮抗した試合だと思った。

いや、むしろサッカーのクォリティ的には国学院久我山のほうが上回っていたと言え、相変わらず一糸乱れぬゾーン・ディフェンスで東福岡の中盤に提供されるパスを狙ってカットし、トップ下14番名倉君の巧みなボールキープから東福岡のアンカーの両サイドやSB裏のスペースを使う攻撃が機能していた。前半は確かに東福岡がボールは支配していたが、実際にペースを握っていたのは国学院久我山のほうだったと言える。

久我山はゾーン・ディフェンスのチーム戦術も見事だが、個人のスキル的にも高いものを持っており、次のプレイとスペースを予測・判断してトラップの方向付けを行い、マークに付かれてもボディシェイプでしっかり相手をスクリーンしてからパスを出しているため、無理なく確実にボールを繋ぐことが出来ていた。確かにフィジカルやスピードという面では東福岡が上回っていたが、総合力では久我山もひけを取っていなかったと思う。

それだけに、前半36分に先制点を許した場面のミスは痛かった。それまでせっかくバランス良く守れていたのに、この場面では久我山右SBの選手がプレスで前に行き過ぎてしまって簡単に抜かれると、そのマークにCB2枚が釣り出され、逆サイドのSBが中に絞って対応したため、マークが全部ずれて三宅君がフリーになってしまった。そして後半早々に、海外でも話題となったFKのトリックプレイで東福岡が2点目を決め、これで久我山のゲームプランが大きく狂ってしまった。

これで久我山は攻撃時にバランスを崩して攻め上がらざるを得なくなり、後半15分過ぎからの波状攻撃は迫力があったが、最後の部分で東福岡の体を張った守備に阻まれると、後半22分に一本のミドルパスに対して久我山の守備陣が処理をミスし、餅山が抜け出して3点目を決めてほぼ勝負あり。これでさすがに久我山も集中力が切れて最後は5点という大差になってしまった。

それだけ、久我山のミスを逃さない東福岡の決定力が素晴らしかったとも言えるわけだが、もともと東福岡はプレミアリーグWESTでも2位にランクされている地力が上のチーム。それを内容的には拮抗したレベルにまで持って行った久我山の組織力、個人戦術能力について、もっと日本のユース関係者、指導者は注目すべきではないだろうか。

てか、今年の高校選手権で最初に見たチームが国学院久我山だったので、こういうサッカーがもっと見られるかと本当は期待していたんだけどね・・・結局久我山がオンリーワンっぽかったのでちとガッカリ(笑)。来年は、もっと良い組織を持ったチームが増える事を期待しよう。