「5バック戦術の本質を理解していなかった神戸の選手たち」天皇杯 準々決勝 ヴィッセル神戸-浦和レッズ

奇しくもヴィッセル神戸にとって、浦和レッズはリーグ最終戦で5-2と大敗してしまった相手。それを踏まえてネルシーニョ監督がどういう対策を取って来るかと思ったら、何と5バックのミラーゲームを挑んで来た。

浦和のミシャサッカーのポイントは、攻撃時に4-1-5のような形になる事で、4バックの相手に対してサイドで数的優位を作り、そこを基点としてサイド攻撃や中とのコンビネーションを作り出す事にあるが、神戸は5バックでそこを数的同数に持ち込んでその基点潰しに来た・

確かにそのネルシーニョ監督の考え方は決して間違ってはいなかったが、問題は神戸が5バックなのにゾーン的に守ろうとしてしまった事にあった。

5バック戦術のもう1つの利点は、DFラインから前に出てポストプレイを潰しに行っても、他の選手がそのポジションを埋める、いわゆるディアゴナーレの動きが少なくて済み、穴が空きにくいという事にある。

しかしそれは同時に、前線が1人で相手のDFラインに対して十分なプレスがかけられないので、ポストプレイに対して厳しく当たりに行かなければ、リターンされたボールを拾った中盤やDFの選手が簡単に前を向いてプレイ出来てしまうという事の裏返しでもある。

そして前半の22分と25分に浦和が決めた2点は、まさに浦和の興梠と李忠成に対して神戸のDFが当たりに行けず、簡単にポストプレイからのスルーパスに抜け出されてしまった事によるものだ。特に、3バックの中央でラインを統率していた岩波の責任が大きい。

神戸は2点を先制されてから、ようやく5バックが浦和の前線に対してしっかりと当たりに行くようになったが、32分に三原が裏へ抜けようとした李忠成を引っ張って倒すという残念なプレイで2枚目のイエロー。これで神戸の可能性がほぼ潰えてしまった。

前半終了間際に3点目を決められてしまった神戸は、後半も5バックの5-3-1という形で戦い、ペースを落とした浦和に対して何度かカウンターのチャンスを作るが、シュートミスやGK西川のファインセーブに阻まれ得点できず、試合はそのまま3-0で終了、浦和は柏との準決勝に臨むこととなった。

まあ神戸はあらゆる意味で若さが出てしまった試合だったかなと。来期のネルシーニョ監督続投は決まっているが、まだまだ薄い選手層を考えると補強も含めてより一段と強化しないとリーグの優勝争いは困難である。逆に浦和は、ここに来て李忠成の爆発は大きい。柏との準決勝も浦和の有利は確かだが、変に元日決勝を考えてしまって集中を切らさないようにしたいところ。