「案外、ネイマールの欠場は今後のブラジルにとってプラスなのかもしれない」コパ・アメリカ グループC ブラジル-ベネズエラ

現在のブラジルにとって、攻撃面の8割を依存していたエースのネイマールが、コロンビア戦直後にボールを故意に相手へぶつけ、主審に対しても暴言を吐いて4試合の出場停止になったために決勝に進出したとしても出られない事が確定。試合の結果によってはグループステージで敗退するという崖っぷちで迎えたベネズエラ戦。

注目のネイマールの代役としてドゥンガ監督はベテランといってもまだ31歳のロビーニョを抜擢、あとの2列目はコウチーニョとウィリアン、2戦目に続いて1トップはフィルミーニョを起用した。

ベネズエラはあのコロンビアに勝ったという事で注目して見てみたのだが、カウンター戦術かと思いきや意外とショートパスを繋いで来るサッカーで、手数をかけてサイドまで持って行ってクロスを上げるものの、あまり得点の匂いが感じられないというサッカーは、まるでどこぞの代表チームを見ているようでとても親近感が湧いてしまう(笑)。

さらにゴール前での集中力が切れがちなところも某チームと一緒で、前半9分のCKからチアゴ・シウバがフリーでボレー、コースはGKの真上だったが反応が遅れてブラジルが先制点をゲットする。

先制点は取ったものの、その後のブラジルはどうにもピリッとせず、前線が高めの位置にとどまっている割にはDFラインが低く、それでも全盛期のブラジルなら各選手のボールキープ力でゆったりとパスを回し、どこかに縦パスが入った瞬間に全員が急発進してゴールを奪うサッカーをするのだが、今のブラジルにはとてもそんな余力はなく、中盤をベネズエラに支配されてなかなかペースを握れない。

しかし前半30分を過ぎたころからブラジルは名を捨てて実を取る戦略に転換、前線がある程度引いた形のブロックを作ってベネズエラのショートパスをカットし、あまり守備に戻らず前線でフラフラしているロビーニョにボールを預けてカウンターを狙う形にすると、ようやくブラジルらしい攻撃のスピードが見られるようになる。

そしてこの試合でのブラジルには、はっきりとサイドを狙うというチームの共通認識があり、後半6分の勝ち越しゴールも、この日は何度もサイドに流れて鋭い突破を見せていたウィリアンが左サイドからアウトにかけたクロスをフィルミーニョが決めたもので、2列目がポジションチェンジをしながらベネズエラのマークを外してボールを回し、その間にダニ・アウヴェスがオーバーラップしてサイドチェンジを受けて切り崩すなど、ネイマール時代の中央突破偏重から完全に発想を切り替え、それを選手がきちんと実行できるところはやはり腐ってもブラジルである。

後半22分にダヴィド・ルイスをボランチに入れて守備力を強化しようとするブラジルに対して、ベネズエラは30分過ぎから猛攻を仕掛け、39分にボルシアMGのアランゴのFKをブラジルGKジェフェルソンが弾いたところをミクが押し込み1点差。しかしブラジルは恥も外聞も捨てて守りを固め、そのまま逃げ切った。

ネイマールが居なくなってから、初めてドゥンガのチームらしい組織で戦うサッカーが見られたというのは皮肉ではあるが、この試合でMVP級の働きだったウィリアンを始め、これまでネイマールに頼りきって存在感が薄かった他のセレソンが今後の試合で自信を得られるのであれば、ネイマールの欠場も災い転じて福となすと言えるのかもしれない。