「柿谷の得点は、来期のスタメンを勝ち取る鍵になったのか?」スイス・スーパーリーグ第35節 トゥーン-バーゼル

昨年11月のアーラウ戦以来先発出場が無く、最近ではベンチ外に置かれる事が珍しくなくなってしまったバーゼルの柿谷。しかしバーゼルのリーグ優勝が決まった後の試合という事で、パウロ・ソウザ監督は来期に向けての戦力テストという意味合いで柿谷を先発起用した。

柿谷は4-2-3-1の1トップとして起用されたのだが、前半ははっきり言ってほとんどボールに触らせてもらえなかった。リーグ3位のトゥーンはホーム最終戦とあって試合開始から凄まじいプレッシャーをかけて来て、控え主体で構成されたバーゼルの中盤は完全に制圧されて前線へパスを出すどころでは無くなり、柿谷自身も相手CBからガッツリマークされていて得意の裏抜けはおろかポストに下がった時もただ真後ろに返す事しか出来なかった。

後半からはアジェティとポジションを入れ替えて右ウイングに入ったのだが、これが1トップ以上にボールが回って来ず、たまにSBとの連携で裏を取ろうとしてもタイミングが合わず、バーゼルの攻撃がとにかく相手陣内に入ったらシュート、みたいな個人アピールの場になっていたのでゴール前に入り込むタイミングがほとんど見つからなかった。そして相手SBのオーバーラップに対してマークをサボる場面もあり、前半の1トップ以上に散々な出来だった。

後半18分にガシが入ってからは再び柿谷が1トップに戻り、その頃からようやくトゥーンの運動量が落ちて来て少しずつボールに絡む場面が増え始め、バーゼルは28分にPKで同点に追いつくと、30分には右サイドから単純に前へと出されたボールを柿谷が追い、相手CBが目測を誤ってか柿谷と入れ替わってしまい、ボールの落ち際をうまく引っ掛けたシュートがトゥーンゴールに吸い込まれて、嬉しい今期3点目となるゴールを決めた。それ以降は、ようやく柿谷の動きと周りのタイミングが合って来てリズムが出来たものの、それはあまりに短かった。

逆転されたトゥーンは終盤に強引なパワープレイでバーゼルを押しこみ、43分に胸トラップでボールを受けたサディクが反転してシュート、そこまで何度もファインセーブで失点を防いでいたバーゼルGKヴァイラーティが伸ばした手をかすめるゴラッソが決まり、そのまま試合は2-2のドローで終了した。

60分間までの柿谷は、これはもう来期は戦力外だなと諦めるしか無いぐらいに存在感が無かったが、何とか後半30分のゴールで命綱に引っかかったというところだろうか。サイドでスタメン起用するには守備力とインテンシティが足りなさ過ぎるので、今後の起用は1トップに絞られるのだろうが、それならやはり単純にポストで後ろに返すだけではなく、相手に体を預けて時間を稼いだり、粘りながらフリックで前につないだりと、味方のベクトルを前に持って行く力強さが無いと、なかなかパウロ・ソウザ監督を納得させることは出来ないのではないかと思う。

とは言え、この試合で一応の結果は出したので、次の最終戦で柿谷がどういう起用をされるかで、今回の結果に対する監督の回答が見えてくるはず。そこにまずは注目してみたい。