ガンバとエヴァートンに見る”スピード”の差が、リオ五輪アジア予選にもたらす影響

昨日は帰宅してからの食事中に、ちょうどその時間帯にやっていたACL城南FC対ガンバの試合を見ておりました。

が、結果と内容は御存知の通り。何より落胆したのは、その前に見ていたドルトムントやフランクフルトの試合に比べて、あまりにも腰が引けているというかインテンシティのかけらもないスローモーなプレイの連続だった事でした。

城南は初戦でブリーラムに敗れていたように決して強くない相手であり、実際にガンバが速いサイド突破からクロスを上げた時にはチャンスになっていました。なのにガンバの選手には相手の守備陣形が揃わないうちに攻めきるという意識があまりにも希薄で、ボールを持ったら足元でコネてわざわざ相手が守備を整えるまで待ってから、足元足元で短く緩いパスを回すだけで、一向に相手の陣形を揺さぶろうとかマークを剥がそうという狙いが感じられませんでした。これでは、どうぞカウンターで狙ってくださいと体を差し出しているようなものですよ。

確かにドルトムントも前半戦は調子がボロボロでしたが、それは前線がキープ出来なくてプレスの連携を取る準備が出来てないのにラインを上げて裏を取られていただけであり、早く攻めてボールを奪われても前で取り返せば良いというゲーゲンプレッシングの思想がブレていたわけではありません。それに比べると昨日のガンバのどこにチャレンジや哲学といったものがあったのしょうか。

批判しっぱなしなセルジオ越後のような事は言いたくないんですが、いくらACLが経営的にメリットが少なく、リーグ戦を優先すべきだったとしても、たまたまテレビをつけてこの試合を見ていた一般人がJリーグのスタジアムに足を運ぼうという気になるでしょうか? ACLを捨ててリーグを勝てば持ち出しも少なく利潤が増えて万々歳と考えているうちに、ガラパゴスJリーグの中ではどんどんファンのパイが狭まってゆでガエルになるだけではないですか?

アジアはピッチも審判も低レベルで試合が荒いし、開幕前でコンディションが整ってないしと言い訳を並べて、これなら勝てなくても仕方ないと考えるそのトップチームの姿勢を見ていれば、そのチームで育っているユース世代の選手がアジア予選で勝てなくても仕方ないと同じように考えてしまうのは当然のような気がします。ユースもACLも負けたから弱い、その事実から目を背けているうちは下り坂から抜け出すのは難しいのではないでしょうか。

で、ガンバが2点目を取られたあたりから見るのを止めて、今度は久保が先発したエヴァートンとヤングボーイズの試合を見てたのですが、ヤングボーイズは負けたとはいえボールを持ったらとにかく前へ進む意識は共有しており、久保も時々鋭いドリブルでの切れ込みやゴール前への飛び込みを見せていました。

しかし試合はヤングボーイズが先制したものの25分にもったいないPKを与えて同点にされ、前半のうちに3点を取られてあっさり勝負を付けられてしまいました。そのエヴァートンとの最も大きな差は、やはりスピード。それもドリブルとかパスの速度ではなくて”シンキング”スピードですね。

ミララスが決めた3点目の場面がそうですが、エヴァートンがボールを奪うとすぐにミララスがラインの裏を取り、それに中盤からロングスルーパスを合わせており、チームメンバー全員がピッチの大きさで視野を共有しているのが分かります。それに対してガンバは各選手が自分の周り10m程度しか見ておらず、FWが動き出していてもひたすら足元でモタモタ・・・岡崎ならともかく、これでは前線の選手が飛び出しを諦めてしまうのは当然です。そしてさらにパスが出しにくくなるという悪循環。

残念ながら、世界レベルで動き出しが早くて視野の広い選手がいても、他のチームメイトがそのレベルに無ければ、その選手も同じレベルに落ちてしまうという事は去年のセレッソなどで十二分に証明されています。昨日はリオ五輪アジア予選メンバーが発表になりましたが、久保や南野を活かすも殺すもチーム次第である事は間違いありません。くれぐれも、Jリーグ的ガラパゴスな発想のチームにならない事を願いたいですな。