「最後に勝負を決めたのは日本海の足腰」高校選手権 決勝 前橋育英-星稜

埼玉スタジアムに4万6千人も駆けつける大観衆の中で行われた高校サッカーの決勝は、その観客数に答える一進一退の攻防の末90分間では決着が付かず、15分ハーフの延長戦で2点を追加した星稜が石川県勢初となる優勝を飾った。

試合は序盤からどちらもロングボールを基本にリスクレスな戦いを選択するが、そこからの展開は対照的で、星稜はキープ力で勝る前線にボールを集めて中盤がセカンドボールを拾い、すぐさまサイドがオーバーラップして縦に抜ける攻撃一辺倒。しかしサイドから単純にクロスを上げるわけではなく、そこからカットインしてシュートを打つかサイドチェンジ、さらに外側を回る選手に流してえぐってクロスといったように、一旦サイドを中心に溜めを作って相手のDFを引きつけ、出来たスペースを二次利用する意識が徹底されていて良い意味でとにかく攻撃がしつこい。

対する前橋育英は、ロングボールからのイーブンボールを中盤が前を向いてボールを拾ったら、そこから中を細かいドリブルで突破しながらワンツーなどで崩そうとして来る。が、当然ながら攻撃の厚みという面では星稜がはっきり上回り、前半のスコアこそ11分に前橋育英のバックパスを拾ったところでGKに倒されたPKを星稜が決めた1点のみに終わったが、ほとんど星稜の一方的なペースと言って良い内容だった。

ところが後半になると突然前橋育英の布陣がコンパクトになり、星稜のボールキープには中盤が戻ってプレスバックする事で自由にはさせず、前半のうちは単独でミドルシュートを打つだけだった攻撃もボランチが前線に絡んで来るようになり、試合展開はイーブンな状況に変化していく。そして8分にGKからのフィードが流れたところを野口が上手く相手をスクリーンしながら振りぬくゴールを決めて同点に追いつくと、10分にはエース渡辺がサイドを単独突破して角度の無いところからロビングでファーサイドに決めるゴラッソを決めて一気に逆転する。

しかし星稜も下を向く事無くすぐさま反撃し、19分に珍しく右サイドからシンプルにクロスを入れると、CBの裏にノーマークで飛び込んできた原田がヘディングを決めて2-2の同点。その後はオープンな攻め合いになって互いに決定的なチャンスを何度か生み出すものの得点までには至らず試合は延長戦に。

そして延長前半5分、左サイドからのスローインからのこぼれ球を星稜FW森山が迷わずシュートして星稜が再逆転、前橋育英は延長後半早々にGKから青柳がどフリーでヘディングするもののボールはゴール上へと外れてしまい、逆に星稜は10分に森山が強烈なミドルシュートを叩き込んでダメ押し。最後は前橋育英が力尽きる形で激戦の決着が決まった。

前橋育英は、後半はある程度ボールを持てて本来のパスサッカーで逆転をしたまでは良かったが、そこからせっかく決定的なチャンスがあっても最後のシュートの部分でふかしたりと、おそらく準決勝から中1日で120分のサッカーをした事による疲労の影響が出たのだろう。それに比べると星稜は最後の弾丸シュートといい、終盤まで衰えないスタミナと足腰の強さが際立ち、雪国という悪環境を逆手に取った強化の賜物であったように思う。

ここ数年のユース年代はアジアの戦いにおいてさえひ弱さが目立つ状況になってしまっているが、泥臭いサッカーでJユースカップに優勝した鹿島といい、こういうインテンシティの高いサッカーが大会で結果を出している事は大変示唆に富んでいるように思う。そういう意味でも今回は良い大会だったのではないだろうか。