「現在のユース年代の問題点が凝縮された試合」Jユースカップ 決勝 鹿島アントラーズユース-ガンバ大阪ユース

Jユースカップの決勝とは、サッカーのレベル的に高体連のチームを凌駕しているJユースの最高峰を決める試合、と言う事は日本のユース世代のレベルを推し量る物差しになる試合でもあるのだが、残念ながら現在の若手育成に関する問題点が凝縮されているような内容だなと感じてしまった。

まず一番ガッカリした点は、両チーム共に守備があまり組織化されていなかった事。ガンバについては、試合でも見せたようにポゼッション指向が高いサッカーなのである程度個人能力に頼ったマンマークベースになるのは仕方ない面はあるんだけど、鹿島の方は一応4-4-2のフォーメーションになっていて一応バックラインがボールホルダーにチェックはするんだけど、動いたスペースをカバーするような連動した動きは無く、ガンバのSBが上がって来たらSHがタッチライン際まで簡単に下がってしまい、単なる6バックでゴール前に壁を築くだけの守備になってしまっていた。

欧州リーグではこういったドン引きチームはまず強豪に対して持ち堪えられない。中からサイド、そして中へとボールを回されているうちにどこかで壁に穴が空いてしまって強烈なミドルが飛んで来るか、サイドが薄くなったところで矢のようなサイドチェンジを通され、1対1のドリブルでDFが置き去りにされてしまって中でズドン、というのがお決まりのパターンである。

ところがガンバは一方のサイドでひたすら足元に短いパスを回すだけ、工夫といえばヒールとかアウトサイドで独りよがりな精度の低いワンツーなんかをしてみるだけで、強いミドルやサイドチェンジという正攻法が無い。DFラインでボールを持っている時も、高い位置に張っているサイドへフィードを通し、その選手がトラップ一発から前を向いてドリブルすれば楽勝だろうという場面はいくつもあるのだが、攻撃の起点から加速したまま最後まで攻め切ろうという発想も無い。

ガンバが同点に追いついた場面では、いったん右サイドで溜めを作って鹿島の守備を引きつけ、そこから珍しく逆サイドにボールが渡って反対方向へ守備を動かし、最後は中に出来たスペースを使ってのドリブルからPKを奪ったのだが、それがようやく後半の39分になってから出来ましたというのはあまりに遅すぎる。

あまりユース年代に対して厳しい事は言いたくないんだけど、戦術面でも個人の面でも、もっとインテンシティや強さを全面に出して温室育ちなユース選手を蹴散らすようなチームがもっと増えて来ないと、ブラジルW杯以降より一層インテンシティや戦術意識が重要視されている世界のサッカーからどんどん置いて行かれるのではないかという危機感が募るばかりである。そういう意味でも、消去法ではあるにせよ今年の高校サッカーに期待してみたい。