「代表チームのほうが組織的であるように見える理由」EURO2016予選 グループD ドイツ-スコットランド

日本は相変わらず生ぬるい親善試合でメンバーがどうこう言っているってのに、もう欧州ではユーロに向けた本気試合が始まっているわけで、今回のW杯で見せつけられた「親善試合はあくまで親善」という現実を改めて思い知らされて暗い気分になってしまうよね・・・

特に、この試合では世界王者となってジグナル・イドゥナ・パルクでの凱旋試合となったドイツに対して、アウェイのスコットランドが一歩も引かない勇敢な試合を見せ、一時は素晴らしいカウンターで同点に迫るという興奮を与えてくれただけに余計に焦りは募るばかり。

さてそのスコットランドだが、長い間セルティックで中村俊輔のボスになっていたゴードン・ストラカン。セルティック時代はそんなに組織的なサッカーをやっていたような記憶は無いんだけど、ドイツ相手のスコットランドは見事に組織化されたコンベンショナルなゾーン・ディフェンスを見せていたので驚いた。

ただし、ドイツの2列目まではカッチリとゾーンで見ているんだけど、3列目以降の走りこみに対しては4-4ゾーンの前の4人がマンマークで付いて行くのが決まりだったようで、それに気がついたドイツはクロースやクラマーをどんどん前線に走りこませ、空いたバイタルを利用するようになった事が18分のミュラーによる先制ゴールに結びついた。この辺の応用力はさすが世界王者である。

そのドイツの応用力を支えているのが、攻撃に対するゾーンの概念である。ドイツはボランチが前線に飛び込んだり2列目のミュラーがDFラインまでカバーしたりと、ポジションを目まぐるしく変えながらもバランスが取れたサッカーが出来るのが最大の強みなのだが、よく見ると攻撃時に各自が勝手に動きまわっているように見えても、実は必ず3-3-4または2-4-4の並びになるよう走っているのが良く分かる。つまり、誰がどこでボールを持っても、その場所に必ず誰かが走りこんでいるのを全員が共通理解として持っているので、その居るべき場所にボールを出せば攻撃がつながるという確信の元で選手がプレイしているわけだ。

これが日本の場合、コンビネーションは本田と香川、遠藤らの個人的な関係のみに留まっており、攻撃時に必ず同じポジションを取っているのが長友くらいで(笑)、等間隔の距離感とかバランスはおそらく誰も考えていなかったはず。だからこそ、攻撃から守備への切り替えは遅くなるし、誰かが不調になったり守備で相手に対策を取られるととたんに機能しなくなってしまう。

普段一緒に練習する時間が短く、怪我やチーム事情で選手が揃いにくい代表チームだからこそ、あえて約束事を多くした組織的なサッカーである程度ベースの形を作り上げてしまう。かつてトルシエがやろうとした”常識”が、川淵やマスコミによってロボットだと袋叩きにされ、ジーコ、岡田、そしてザックと振り子のように方向性が行ったり来たりしているのを見るにつけ、「個」とか「自由」信仰の罪深さを思わずには居られないのである。あ、また気分が暗くなってしまった・・・(苦笑)