「そう考えればザックは良くやっている」J1第4節 FC東京-川崎フロンターレ

川崎との伝統の一戦である「多摩川クラシコ」でまさかの0-4という惨敗を喫してしまった事で、にわかにフィッカデンティ監督の指導力に大きな疑問符がついてしまう事になった試合。

リーグで好スタートを切った鹿島を3-1で破ったミッドウィークのナビスコカップを見ていないので、それと比べて何がおかしくなったのかは分からないが、この試合だけを見た限りでは、フィッカデンティ監督は相当難しいことをやらせようとしているな、という感想を持った。

まず守備面で真っ先に目を引いたのが、DFラインの4人が相手ボール時にほぼ完全なフラットになっている事。それでフォーメーションが中盤ダイアモンドの4-4-2なのだから、当然ながら1ボランチの高橋の両側には広大なスペースが出来ており、序盤のように全体的にプレスがかかっているうちは良かったが、いったんペースが落ちるとその部分を中村憲剛のスルーパスでズタズタにやられてしまった。

とは言え、実はこういう守り方をするチームはイタリアではそんなに珍しくなくて、4バックは基本的にラインをPAより前に設定してFWとウイングをラインの上げ下げで牽制し、2列目の飛び込みやサイドのオーバーラップには中盤の3人、特に両脇の選手がきっちりマークしてパスを許さないというシステムになっていて、そうやってパスの出しどころを完全に封じ込めて相手の迷い、パスミスを誘って手数をかけずにカウンターというスタイルである。

ところがこの試合では、4バックがラインを揃えることで汲々としている上に、米本と東が高い位置からプレスをかけようとするので中盤にスペースが生まれ、とうてい2列目に付いて行くどころの話では無くなって守備の狙いが完全崩壊、そして米本がバックパスをみすみす相手に渡してしまったチョンボやクリアミスを拾われるなどの致命的なミスを犯してしまったのでは、何がどうやっても勝てるはずが無い。

フィッカデンティ監督もザックと同じように、守備の決まり事は1m単位で細かく行っているそうだが、イタリアとは違って日本ではユース時代にゾーンを守る意識や守備の1対1を教えこむ意識が極めて希薄で、おかげで欧州に渡った日本人選手は軒並み守備で苦労しているわけだが、その高いハードルを超える時間をクラブやサポーター、選手が果たして辛抱強く待てるのかどうか。

さらに、この2試合のようにターンオーバーまで考慮した起用をしていたら余計に時間はかかるだろう。フィッカデンティ監督も、こんな基礎的な事さえまともに出来ないのかと日本人選手の守備文化の欠如に今頃頭を抱えているのかもしれない。

まあそう考えたら、たまの代表戦や合宿の短い期間で細かい戦術を浸透させようとしているザックは大変だよね。ザックが欧州組を贔屓し過ぎると思われている要因は、実はイタリア流の守備戦術に対する欧州組の即応性にあったりするんじゃないかと思ったり(笑)。