「実質、キャプテン本田、現場監督本田」コッパ・イタリア ベスト16 ACミラン-スペツィア

コッパ・イタリアのベスト16、セリエBのスペツィア相手の試合で初先発&サンシーロデビューとなった本田は、後半2分にミランでの初ゴールを決めるなど攻守に貢献、試合もミランが3-1で勝利して準々決勝へと駒を進めた。

とは言え、チームの内容的には相変わらずパッとせず。4-3-2-1で本田と並んで2列目に入ったロビーニョは、序盤こそ守備の意識が見られたものの15分過ぎには早くも戻りを放棄して常時2トップのような状態、3ボランチの両サイドに入ったクリスタンテとポーリはクレバリーばりに上がったまま戻って来ず、メクセスとラミのDFラインがそれほど高く上げてこないので1ボランチのモントリーヴォの周りはスカスカと、スペツィアに良い攻撃陣がいたら間違いなく失点を重ねていたであろうザルっぷりだった。

そんな中で、本田は序盤こそスタートアップの位置を守って右サイド中心に動いていたものの、味方の攻撃は個人でのゴリ押しが多くてあまりボールは回って来ず。そのうちロビーニョが戻って来なくなるとトップ下の居着くことが多くなり、そこからようやく本田にボールが集まるようになって来て、彼が大きくサイドを変えたり固くゾーンを作って守っているスペツィアのDFラインの裏へ浮き球を出すなどで、ようやくミランにチームメイトを使って崩す攻撃が見られ始め、ロビーニョが先制点を決めたあたりから完全に本田はミランの指揮者として味方のボールを一身に集める存在感を見せるようになった。

そしてパッツィーニが彼らしい難しいゴールをポーリの浮き球から決めて2点目を追加すると、本田はモントリーヴォが1人で守る中盤に下がる事が多くなってそこから何度も素早い縦パスを通し、2点差でたるみがちになっていたチームのスピード感を立て直すと、後半開始早々にはモントリーヴォのミドルをGKが弾いたボールを確実に押し込んでダメ押しを自ら決めるなど、常にチームの状況、バランスを考えながらプレイの選択を行う冷静さが際立ち、まさに2試合目にしてゲームキャプテン、現場監督と呼びたくなるような存在感を見せつけた。

ただ、本田の調子自体はまだ万全ではない様子。まあ先発デビューという事で精神的な疲労があったのかもしれないが、後半になると判断が遅くなってとりあえず足元で収めてから考えようといった感じのプレイが多くなり、さすがにセリエBとは言えイタリアらしく巧妙な足元へのアタックでボールロストする場面が目立ち、90分間のプレイやボールキープの技術や判断にまだ課題が残っているところを見せてしまった。

あと少し気になったのは1対1での守備の仕方。この試合ではミランで初のイエローカードをもらってしまったが、それは中盤での相手のドリブルで振り切られそうになってしまったところをユニフォームを引っ張って倒してしまったもので、ロシアならともかく長友の例を見ても個人が守備で抜かれる事に対してイタリアの観客が厳しいのは確かで、トップ下とはいえボランチの選手と位置を変える事が多い本田にとっては、イタリア流の守備スキルは早急に身に付ける必要があるだろう。

まあでも、何だかんだでイタリアでは2試合目、初先発の選手としては申し分ない内容と結果だったのは事実で、香川や長友のデビュー戦だどうだったかと言うことを思い返すと、ミランというビッグクラブでここまでの早い溶け込みぶりを発揮したのは異次元の出来事と言うべきだろう。監督はセードルフに変わるらしいが、間違いなくミランの中心選手として今後も働きが期待される事は間違いないと断言できるホームデビューだった。