「天国と地獄はコインの裏表」J1昇格プレイオフ決勝 京都サンガ-徳島ヴォルティス

京都と徳島の間で行われたJ1昇格プレイオフが行われた日に、徳島が2-0で勝利したという一報を聞いた時、最初に思い浮かんだのは「せっかく準決勝で京都は大人の内容を見せたのに、また接近展開何やらサッカーをやって玉砕したのか」という思いだった。

ところが試合を見てみると、京都は決して攻め急がずに落ち着いた入りを見せ、高い位置からプレッシャーをかけて手数をかけずに前線へ飛び出すサッカーを推し進めていた。じっくり守ってカウンターという方法も無いではないが、セットプレイなどのリスクを減らして自陣からボールを遠ざけるという点では、こういうサッカーが一番効率的である。

実際、前半30分までにクロスが足に合ってれば、ヘディングが枠に飛んでいれば1点ものの決定機が少なくとも3度あったわけで、このうちの1つでも得点になっていれば、おそらく全く違う試合内容になっていただろう。だが運命とは残酷なもので、京都がことごとくチャンスをものに出来なかったのに対し、徳島は39分にCKからフリーになった千代反田がヘディング、ここまで堅守を誇った守護神オ・スンフンが手に当てながらもボールはゴールに吸い込まれ、徳島がワンチャンスをものにしてしまう。

そしてその4分後にはロングボールの競り合いからDFラインの裏へと落ちたボールに津田が反応し、オ・スンフンは飛び出しを躊躇してしまって間合いを詰められず、津田のシュートに反応できずに2失点目。これで完全に京都はゲームプランが狂ってしまい、その後は焦りからか前半のようなシンプルなプレイが影を潜め、各選手が足元でこねては無理なパスを出してカットされるという、ショートパスサッカーの負の側面が丸出しになった内容に終始してしまった。

京都は後半20分から原を入れて3バックにするものの、徳島もアレックスをSHに上げてサイドの守備を強化しつつドゥグラスを入れて前線に基点と素早く対策、京都は終盤にパワープレイを仕掛けてみるのだが前線の高さ不足のために効果は全く発揮できず、全てが裏目裏目に出てしまったこの試合を象徴するかのような結末に終わってしまった。

またも昇格を逃した京都は、監督の大木さんが退任する事になるらしいが、監督の責任は当然大きいとは言え、やはりチャンスを作ってもそれをものに出来るタレントがいないと厳しい。そこがガンバと神戸との決定的な差であり、そこを稲盛さんなり祖母井さんなりが認識してきっちり手当しないと、誰を監督にしたところで来年以降も同じ苦しみに遭ってしまう事だろう。

徳島はさすが小林監督といったところで、狙いがはっきりした堅守速攻サッカーを作らせたら天下一品。2年目以降は分からないけど、ポゼッション志向が増えてきた今のJ1の中では、来年1年はこのままのサッカーで意外と健闘するんじゃないかと思う。あとはどれだけ大塚製薬が本気を見せてくるかだね~。移籍市場の活性化のためにも、是非オフシーズンの台風の目になって欲しいね。