「長友ゴールは試練の始まり」イタリア・セリエA第1節 インテル-ジェノア

マッツァーリ監督体制でのリーグ初戦に挑んだインテルは、長友の開幕戦ゴールという華々しい話題と共にジェノアを2-0で退け、まずは順調な立ち上がりを見せた。
が、内容的にはまだまだ想定通りとはとても言えない試合ではあった。特に前半のインテルは、ビルドアップまではそれなりに形にはなっていたが、そこからの選手やボールの動かし方がスムーズではなく、各選手も戦術的な約束事と自分の感覚とのズレを確認しながらやっている様子で、時折サイドでゴチャッと人が固まってみたり、ほとんど大きな展開が無くて狭い中でのパス交換になり、結局ジェノアのマークを剥がすこと無く45分が過ぎてしまった様子。
後半になると、ジェノアがやや前に出て来たのもあってインテルがスペースをもらってカウンターにつなげる場面が多くなり、右サイドでボールが運ばれている場合には反対サイドの長友が必ずファーでゴール前に走りこむ形が徹底されるようになり、それが75分のジョナタンのクロスを頭からゴールへ突っ込んだ長友のゴールという結果に結びついた。
パラシオとかぶった上のごっつぁんゴールと言われているが、15分ほどインテルが攻め続けてゴールが割れず、攻め疲れが見え始めてミスが増えていた時間帯だっただけに、チームにとっては戦術での狙いが当たってもぎ取った、価値あるゴールであった事は確かだろう。
3バックというと、いかにもポジションチェンジが少なくてサイドからのクロスやドリブル突破一辺倒というイメージがあるが、マッツァーリの3バックはそれとは全く正反対の思想であり、3-5-2と書きながらも実質的には3-1-2-2-2というフォーメーションで、前の6人が激しくサイドでローテーションする事に特徴がある。
今までの長友であれば、誰かが中盤でボールを持った時にタイミングよくオーバーラップする形がほとんどだったが、現在のマッツァーリ戦術の場合は、ボールサイドのCBからプレスが薄い反対サイドへのフィードを受ける約束事があるために、まずは長友がサイドから組み立てないと攻撃が始まらないのだ。
そしてサイドで張る役割は長友だけとは限らず、同サイドのインサイドハーフであるクズマノビッチの場合もあるので、その場合は長友が中に入ってインサイドハーフとして機能しなければならない。そして、長友とクズマノビッチが中に居る時は、2トップが外にオーバーラップしてクロスの選択肢を作るという、ポジションチェンジによって二重、三重の攻め手を作り出していく狙いがある。おそらく、そこにCBまでもがサイド攻撃に加担するのがマッツァーリ戦術の完成形だろう。
つまり、長友がこれから求められるのはクラシカルなSBやWBとしてよりも、ボランチやサイドハーフ、そしてFWとしてのパスやシュート能力になって来るのだ。正直、この面ではまだ長友はビッククラブの域には無いし、もしかするとジョナタンやペレイラのほうが上かもしれない。今は運動量で一歩リードしているのは確かだが、今後のレベルアップが無いといつまでも安泰ではいられないかもしれない。しかし逆に言えば、そこでの経験は必ず代表にも活かされるはずなので、これをチャンスと思って頑張って欲しい。