2002年12月1日

・ベスト16の責任

スカパーはFootとかfor footballとか伝説のWCJなど、良い番組がたくさんあって、試合の無い日でもフォローするのが結構大変だったりするのだが、たまにはどうしようもない番組もあったりする。

その代表格が「ラモテリ2トップ」だが、「サッカーここだけの話」もそれに近いものがあった。内容自体はジュビロの完全優勝や、J1残留争い、アルゼンチン戦などについて清水圭の司会で木村和司、松木、風間、永島の4人がいろいろコメントするというもので、題材自体は悪くないので少しは期待して見始めたんだけどなあ・・・期待する方がやっぱり間違っていたわけだが。

いちいち木村や松木の電波を書くのも時間がもったいないので省略するが、別の意味で面白かったのは、元代表クラスのコメンテーター(以外も)含めて、日本的な体育会的上下関係があからさまに見えてしまっている事だった。

まずジーコ礼賛は当然で、風間に言わせるとジーコジャパンは選手の顔が見えるので期待できるらしい。前にも書いたが私にゃ監督の顔が見えないが。永島だけは、決定的チャンスが作れなかったことを批判していて、精一杯の抵抗を見せてくれた。札幌については、レンタル選手が抜けたので、柱谷でも誰でも成績が悪いのは仕方ないと意見が一致。おいおい、コンササポは誰もそう思ってないようなんだが。ただ永島も、清水圭が「この中の誰を監督にしてプレイしてみたいか」という趣旨の質問で、誰ともやってみたいと逃げていたのはちょいと情けなかった。まあ、面と向かってでは仕方ないんだろうな・・・

極めつけが、木村が鳥栖の監督オファーについて、川淵カピタンから電話があったと発言したことだ。ちょっと待て、そりゃどういうことだ? それって、一般的な監督オファーのルートなのか? チェアマンじゃなくて? まさか、柱谷なんかもそうじゃないだろうな。などと限りなく邪推に走ってしまいそうなので、この辺でやめとく。

こういう古い体質の人間関係を示すなんかいい言葉って無いんだろうか。そう考えると「スターシステム」ってのは素晴らしいコピーだね。この番組のビデオをトルシエに送ってフレーズを考えてもらおうか(笑)。

Nakata.netTVは金田と後藤健生の2人がゲスト。おっ、後藤さんが出てる、しめしめ口直しと思ったのもつかの間、金田がしゃべるしゃべる。ま、時折後藤さんの突っ込みが入るので、アルゼンチン戦は飛び込む人数が少なくて点で合わせようとしても難しいなどと、まあまあ金田も単なるジーコ万歳にはなってなかったのだが、そのうち中山の頑張りが凄い、名良橋は良くやっていたとベテラン賛辞に。

後藤さんはさすがに中田コのフィードを生かすために左SB案を出したり、コンフェデまでにチームの形が見えないと再考すべきなどと言っていた・・・ってそれが当たり前のような気がするんだけど。何でわざわざ「さすが」と書かなきゃいかんのか。

しかし、彼ら日本が弱かった時代の代表選手の話を聞いて思うのは、「日本がベスト16に入った重みを少しでも考えているのだろうか」と言う事だ。

今の日本マスコミの論調では、ベスト16に終わったことは失敗、トルシエはつまらないサッカー、これからは選手の顔が見える楽しいサッカーだ!になってしまっているようだが、頭大丈夫なのかと思ってしまう。と言って、別にトルシエのサッカーそのままで続けろと言っているわけではない。

本当に大事なことは、今回のベスト16という成果を継続させることなのだ。結果をフロックで終わらせない、それが日本サッカーの発展のためだけで無く、今回予選リーグで敗退したチームに対する、さらにワールドカップの権威と歴史に対する義務でもあるのだ。つまり、どんな年代のどんな代表、さらにはJにおいてでさえ、「これがベスト16に値するサッカーなのか」と自問自答していかなくてはいけないのだ。それは優勝というノルマを常に課されたブラジルを見ればよく分かる事だと思う。正にノブレスオブリージュ。皆さん、トルシエが結果出してしまったおかげでつらい時代になったね(笑)。

今のところ、そういう意味の意見をメジャーマスコミで見たのは、残念なことにサカマガのセルジオの天国と地獄だけである。まあ伊達にブラジルで育ったわけではないと言う事か。

アルゼンチン戦にしても、解説者陣は本気で来てくれて嬉しい、本気のアルゼンチンに2点差なら仕方ないと喜んでいるが、何故本気になったのか、何故ビエルサが勝ち方にこだわる発言をしたのか。それを悔しく思わない事こそが相手を侮辱していると思わないのか。

そういう観点から見ると、頑張るから中山が良いとか、これから経験を積んでいけばとA代表の選手が言うことが、いかに情けないのかが良く分かる。だいたい、ブラジルやスペインなどの強豪を別にすれば、ベスト16に入ったチームで頑張っていなかった国があるのだろうか。ベスト16に入ったことは大した経験じゃないのだろうか。秋田や中山はサブだったから?ジーコになってリセットしたから?じゃあ何で今はサブがスタメンなの?それほどそのサブだった人は経験も能力も上なんだろうね?ベスト16に入ってスタイルをリセットするぐらい不満に思えるほど日本は強くなったのか?と自分が他国の人間なら疑問に思うだろう。

頑張るのは当たり前、世界トップ20と互角に渡り合える経験があって当たり前、その上でもっと上を目指すために選手選考や戦術はどうするのかと言うビジョンが、今、問われているのだ。


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」