2004年1月2日

・今年のサッカー界展望2004年版

去年もやったように今年のサッカー界についての展望をやってみる。例によって、数字は期待度順である。

1.アテネ五輪

今年の注目はまずこれだろう。リスクレスなフラット3という矛盾や、未だに流動的なチームの軸、そしてクラブで見せている活躍が出来てない選手達といった様々な課題を、Jを無視した合宿で無理やりまとめ上げようとしている山本監督だが、果たして最終予選までに間に合わせ、本番で成果を出す事が出来るのかどうか。ワールドユースベスト8の選手達を新しい力に出来るだけの器量を見せる事が出来るのかどうか。メダルへの難問は山積みである。また、A代表が黄金組で席巻されている現在、若手が欧州移籍をアピールするには五輪しかないわけで、その意味でも結果は重要と言えるだろう。

2.J昇格をめぐる争い

2005年からのJ1の18チームへの増枠、JFLでは大塚FC、愛媛FC、ザスパ草津がJ2入りの栄冠を目指してJFLを戦うなど、例年以上に昇格争いに注目が集まる事は間違いない。特にJ2の増加はベテランプロ選手や、強豪に加入しながらも芽が出なかった若手、トップチームへの引き上げが狭き門と化しているJ1クラブのユース選手の受け皿として是非とも必要だと言える。今年はJFLも目が離せない。

3.ビッグクラブ同士の競争

浦和が豊富な資金力に加えてナビスコカップ優勝というチームの箔を付けて一気にJのトップクラブとして名乗りを上げ、J1シーズン完全優勝を果たした横浜Fマリノス、藤田復帰で古豪復活を目指す磐田、ベテランを切って世代交代を進める鹿島、そしていつまでも他の自動車メーカーの後塵を拝する事は許されない大トヨタの名古屋と5つのビッグクラブがしのぎを削り、そこに着実に成長してきているFC東京、主力放出をオシムの手腕で補えれば市原、西野が化けたらではあるがガンバあたりが加わった形で、今年はJ1の優勝争いを演じる事になるだろう。マネーパワーと監督手腕の戦いにも注目である。

4.ドイツW杯1次予選とアジアカップ

1次予選については敗退など問題外なので特に論評はしない。ただ、アウェイでのインド戦が酷暑が予想される9月に行われるなど、ただでさえコンディションが悪くなりがちな海外組に頼ったチーム作りでは危ない事になる可能性はあるとだけ指摘しておく。そしてアジア杯は来る最終予選に向けての絶好のリハーサルだ。ここでは何が何でもベスト4に残る事。最終予選で胃の痛い思いをしないためには、ライバル国に対してトラウマを植え付けるだけの圧勝劇が求められる。とりあえず今からジーコにはS級ライセンスを受講して欲しいのだが・・・

5.ユーロ2004

アジアカップの年はユーロである。レベルの高い出場国が揃っているが故に、グループリーグから激戦が予想される。本命はやはりフランス。若返りが成功した固いディフェンスに現在世界No.1FWと言っても良いアンリと隙が無い。トッティ率いるイタリア、自国開催に向けての強化の成果を見せたいドイツ、コラーやネドベドにとっては最後のチャンスのチェコ、比較的楽なグループに入ったスペインとポルトガルが二番手グループだろうか。イングランドはリオファーディナンドのドーピング回避問題がどう響くか、オランダはFW以外の若返りが無いという点で苦しいか。断崖の上に立つブラガの前衛的なスタジアムなど、ピッチの周りにも注目である。

6.Jクラブ経営問題

まだ日本サッカーは代表人気に引っ張られているところは大なので、万が一アテネに出れなかったりW杯アジア予選で敗退したりした時には、マスコミこぞってのサッカーへのネガティブキャンペーンが展開される恐れがある。カピタンは単にクビにすれば良いだけであるが、カピタンとJリーグを刺し違えるわけにはいかない。たとえ代表が不振でもクラブがあればそれで良いと言うサポーターをどこまで増やす事が出来るのか。パルマラットの破産を見ても、地域密着を果たせていないクラブは一寸先は闇である。サポーター、フロント、自治体一丸となった地域へのアピールが求められる。

7.海外組の巻き返し

どっかのベストメンバー好きな監督のおかげで、欧州のシーズン前半では冴えなかった海外組だが、1次予選での召集など今年はさらなる試練が待ち構えている。そんな中でどれだけコンディションを整え、何よりゴールと言う結果が出せるかどうかが重要になるのは間違いない。個人のレベルアップはもちろん、将来のパイプ作りにとっても欧州挑戦の道は途絶えさせるわけには行かない。頑張って欲しいものである。

8.頑張れ日本人指導者

従来だと、とりあえず3バック、攻撃でも守備的でもない中途半端な戦術、選手を並べてみてだめだったら並びを変えるだけ、メンタルのみかメンタル無しのどちらかといったチーム作りが多かった日本人監督だが、Fマリノスの岡田監督は言うまでも無く、リーガエスパニョーラを見て生まれ変わった原監督、バルセロナでコーチとしての研鑚を積んで結果を出した反町監督のように、チームをトータルでプロデュース出来る人が増えてきたのは喜ばしい。期待された清水の大木監督が失敗したのは残念だが、日本サッカーの底上げには選手だけで無く日本人指導者のレベルアップが不可欠である。頑張ってもらいたい。

9.ユース世代の強化

ブラジルを見るまでも無く、世界ではユース世代であってもA代表並みの個人能力が必要とされる現代サッカー界において、キッズプログラムやプリンスリーグの開始、パスサッカーから1対1を重視する指導(遅いよ・・・)への転換と、日本も遅ればせながら若年層世代の強化方法に改革が行われた昨年だが、その成果がどう出てくるのか。日本の少子化の影響が顕著になって来ている現在、東欧並の対人口効率の良さを実現していかないと強豪の仲間入りは難しい。カピタンも太鼓持ち記者におだてられて喜んでる暇があったら、もっとこういう方面で努力してもらいたいものである。

10.電波駆逐

まあお約束として(笑)。北澤は既に優れた解説者だし、引退する選手も出てきているフランスW杯世代が中身の無いサッカーライターを駆逐しはじめている状況だが、学習能力が無いマスコミがキャッチーなものを求めている限り電波の種は尽きないわけで、今後も監視を続けていこうと思う所存である。


サッカーコラムマガジン「蹴閑ガゼッタ」