書評

今週、2冊の本を読んだ。
1つは、ステラン・ダニエルソン著「日本発見」。これは、2002年W杯の時に、日本に滞在した、スウェーデン人カメラマンの著者が、日本に滞在するうちに気に入ってしまい、当初の滞在予定を延ばしてまで過ごした記録である。そしてもう1つは、おなじみフローラン・ダバディの「タンポポの国の私」である。
前者は、日本の生活文化や自然に感銘を受けている他に、日本人に特有の「外人に対する過剰な親切」、本の中では、間違ってのぞみに乗っても車掌が見逃してくれて超過料金を取られなかったとか、飲みに行くと必ず食事をおごられたとか、日本人が自国人に対しては決してしない事についていちいち感動していて、いささか「おいおい、それを真に受けたら困るよ」と突っ込みを入れたくなるような代物で、後者はダバディのお坊ちゃま的コスモポリタン思想満載の、少々ゲップが出て来るようなブツであったが、本の内容からすると当然の事だが、双方ともに日本のサッカー文化に対する意見が述べられていて、その違いが面白かった。
日本代表のプレイ自体には、両方とも、よく言われるような、組織立ってはいるけれど、積極性の無さだとか意外性の無さだとか、経験の不足から来るナイーブさ、ひ弱さなどが書かれていて、ほぼ同じようなものであったのだが、大きく食い違っていたのは日本のサポーターに対する意見だった。
ダニエルソンは、日本のサポーターは熱狂的で素晴らしく、他の欧州の国だったらたいていは他国のチームに対してサポーターは憎しみを示すのに、日本のサポーターは愛情を示していて、サッカーに対して本当の愛があるように見えたそうだ。確か、イギリスの新聞でもそういう事を書かれていて、日本でも一時話題になったので、そういう感想を持つのが(欧州にとって)一般的な印象なのだろう。
それに対して、ダバディは、代表の試合でサポーターが「ニッポン!ニッポン!」と連呼するのが、戦後日本において過剰に抑圧されたナショナリズムの反発に思えて、異常だと思ったそうだ。
なぜ、二人の印象がここまで食い違うのだろうか。私には、残念ながらそこに二人の日本人に対する理解の浅さが見えているんじゃないかと思う。
確かに、我々はイングランドやカメルーンを一生懸命応援した。しかし、それは中津江村で見せたカメルーンプレイヤーの、人をやきもきさせた気まぐれとは正反対の人懐こく陽気な振る舞いに魅了されてしまったせいであったり、ベッカムやオーウェンなどのスポーツ選手とかけ離れたエレガントな外見に左右されていたものであって、決して本質など見ていないと断言できる。
カメルーンが好きになったからといって、キャンプ地の人たちを別にすれば、植民地を通じて深く関係があった欧州と比べて、カメルーンについて事前に豊富な経験や知識があった日本人はほとんどいないだろうし、マスコミも微に入り細に入り紹介したりはしていない。また、代表に盛り上がっていたサポーターも、昨日はイタリアやイングランドのユニフォームを着てスタンドに座っていた人間だったりするわけで、ニッポンと叫ぶことは、単にその場の盛り上がりでやってるだけで、W杯オフィシャルペーパー様は別にして、誰もナショナリズムなど意識してはいない。
だいたい、おそらくマスコミが封じようと懸命になっていた、韓国の不思議な躍進と日本無視の態度により発生した嫌韓感情も、ネットで盛り上がってアンジョンファンに対するバッシングまで至った事はあったが、今ではすっかり沈静化している。なんと移り気な国民であることか。
つまり、両人とも日本のサポーターを、そこまで深く考えて、信念に基づいて行動していると買いかぶっているわけだ。でもそれは、さまざまな不幸な歴史で形作られた、欧州における国境感覚と、日本のそれがあまりにも違いすぎるため仕方ないところはあるように思う。ただ、日本が長いダバディに誤解があったのは少々残念ではあるが。
かように突込みどころはたくさんあるが、同時に2冊、外国人から見た日本サッカーについて書かれた本が出るということは、やはりW杯でも無ければそういう機会は無いわけで、ちょうど違った角度からの視点で見ると、2次元から3次元の立体として見えてくるように、面白い発見がいろいろ見つかるので、皆さんもぜひ読んで欲しいものである。

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2002/11/23 | コラム・書評

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