「”日本のシメオネ”上野監督は甲府をアトレティコ・マドリーへと作り変える?」ルヴァン・カップ グループB コンサドーレ札幌-ヴァンフォーレ甲府

リーグ戦では現在3位と絶好調の札幌だが、ルヴァンカップではグループ最下位と低迷し、この試合で負けるとグループリーグ敗退が決まってしまう状況。対する甲府はJ2に降格した今期は17位と低迷、4月末に吉田達磨監督から元山口監督の上野展裕氏に交代したところ。

とは言えどちらも過密日程を考慮して前節のリーグ戦から完全ターンオーバー、それだけに監督の志向する戦術が控え選手にまでどれだけ浸透しているかという視点で見てみた。

札幌のフォーメーションはミシャサッカー定番の3-4-3、対する交付も3-4-2-1と一見するとミラーゲームのように見えるが、札幌はマイボールになるとアンカーが下がって2-3-2-3のような形になり、甲府は5-4-1のコンパクトなブロックを自陣に作りつつ、札幌がボールを持つ位置によってプレスの位置を柔軟に変える守備を見せる。

試合はいきなり序盤に動く。甲府がスローインからセカンドボールを拾い、佐藤のシュートが相手に当たったこぼれ球を金園が蹴り込み甲府が先制点をゲットする。

その後も札幌は中盤でのパスミスから何度も素早い飛び出しを見せ、実に甲府は前半10分までに7本のシュートを放つ。それでも何とか耐えていた札幌だったが、後半17分に横山がGKに緩いバックパスを送ってしまい、それを金園に拾われて2点目のゴール。

ここから札幌は、選手を1人飛ばすパスでサイドや前線で基点を作り、ようやくシュートを打つ場面を作り始めるのだが、戻る動きもサボらない甲府の守備を完全に崩すまでには至らず、試合の前半を0-2で折り返す。

後半も甲府の出足の良さは変わらず、15分にはサイドへの飛び出しを交えてPA内から連続してシュートを浴びせるが、ここは札幌GK菅野が鋭い反応で何とか防ぎ切る。

後半25分頃から、さしもの甲府も前からプレスをかけられなくなり、札幌が中盤でセカンドボールを支配して前線に並んだ5人に対してパスを繋ぎ、ミシャサッカーらしい分厚い攻撃を仕掛け始め、31分には宮吉が右サイドからカットインしてシュートもわずかにクロスバー内側に当たってノーゴールの判定。

しかし甲府も西口がカットインから決定的なシュートも菅野が右腕1本で止めると、後半41分にニアゾーンを抜け出したクロスを曽根田がきっちり合わせて3点目、これで完全に勝負有り。

上野監督については山口時代から高く評価していた監督だったが、やはりボールの位置と状況によってプレスのかけどころ、ゾーンの高さを細かく設定する守備は、3バックではあるがアトレティコ・マドリーのそれを彷彿とさせる。しかも戦術をサブメンバーに対してもきっちり浸透させる能力はまさに「日本のシメオネ」。てか何で、山口を解任になってからどこも取らなかったんだろうね?

それに比べて、札幌の選手がやっていたのはまさに「自分たちのサッカー」。とにかく相手の守備がどうであるかを全く見ずに、パスを繋ぐ事にこだわり過ぎて、後半は飛ばしパスで持ち直したものの、あっさり甲府の罠にハマって自滅。具体性を伴った戦術指導力の差もあるのかもしれないが、やはり広島・浦和時代と同様に、ミシャサッカーはサブメンバーにとっては習得のハードルが高いという現実を見せつけられた内容と結果になってしまった。