「ヨーロッパカップ決勝で、酒井のマルセイユがアトレティコに勝つ方法」UEFAヨーロッパリーグ 準決勝 第2レグ アトレティコ・マドリー-アーセナル

プレミアリーグ最長、実に22年間もアーセナルの監督としてチームを率い続けてきたベンゲル監督の退任が決まり、是非ともヨーロッパリーグ優勝で有終の美を飾りたいアーセナルと、優勝候補大本命のアトレティコという事実上の決勝戦。

エミレーツ・スタジアムでの第1戦を、アウェイゴールを揚げての1-1で折り返したアトレティコは、ジエゴ・コスタとグリーズマンの2トップに並べた不動の4-4-2、対するアーセナルはラカゼットの1トップにエジルとウェルベック、インサイドハーフにウィルシャーとジャカを起用した4-3-3。

通常であれば、4-3-3は4-4-2に対してサイドで数的優位を作りやすく、ニアゾーンの攻略もやりやすい相性なのだが、アトレティコは縦横にコンパクトなゾーンを作りつつ、DFがボールを持つと2トップが絶え間なくプレスをかけに行くし、オープンサイドにボールが出ても各選手のアプローチが本当に素早く、4-4-2ゾーン・ディフェンスの欠点を限界まで押し下げている。

アーセナルにチャンスが無かったわけじゃないんだけど、せっかくSBのモンレアルがオーバーラップしてボールを持っても、アトレティコのカバーが入るとすぐにエジルらにパスしてしまって結局アトレティコに守備陣形を整えられてしまい、前半はアーセナルがわずかシュート数1本に抑えられてしまうという鉄壁ぶり。

逆に前半のロスタイム、ジエゴ・コスタが左サイドに張って待っていたのを、ベジェリンがボールウォッチャーになって視界から完全に外してしまい、サイドチェンジが飛んで来て慌ててマークに走り出すも時すでに遅し。ジエゴ・コスタがベジェリンを難なく腕でスクリーンしながらシュートを決めてアトレティコが先制。この時点でトータル2-1でアトレティコがスコアで上回る。

アーセナルも当然反撃に出て、後半6分にはスピードに乗ったカウンターをガビが止めてイエロー、その直後にもウィルシャーのシュートを拾ったラムジーが強引にセンターを割って足にうまくヒットせず枠外になった場面を作ったが、ここがこの試合で一番アーセナルに可能性を感じた時間だった。

とは言え、その後もアーセナルはボールを支配しながら、サイドへの短い飛び出しを上手く使ってクロス、それを跳ね返されてもムヒタリアンのミドルなどでゾーンを崩す定石的な攻撃は繰り返していたのだが、後半30分で勢いが落ちてその後はアトレティコペースに移ってしまった。

後半43分にはアーセナルPA内でのミスパスから最後はサガン鳥栖への移籍が噂されているフェルナンド・トーレスがシュートもGKがかろうじてセーブ。逆にアーセナルは疲労からかラストプレイの精度がさらに落ちてしまい、パワープレイも不発で試合終了。アトレティコがアグリゲートスコア2-1で逃げ切った。

これでヨーロッパリーグ決勝のカードはアトレティコ対マルセイユになったわけだが、正直言ってマルセイユはかなり分が悪い戦いになりそうである。ジエゴ・コスタはボールが収まる上に反転、ドリブルなどゴール前でなんでも出来る選手。グリーズマンはここぞという場面での動きの鋭さ、トラップから次のプレイに入る速さはワールドクラスで、マルセイユのCBだけで彼らを抑える力があるとは思えない。

それだけに、SBの酒井がCBと協力して2トップを封じ込められるか。ロランドがスタメンに戻り、ルイス・グスタヴォがボランチに入って5人で強固な壁を作り、トヴァン、パイェのタレントによる一発のカウンターやセットプレイに賭けるしか無い。酒井が攻撃で見せるような場面は少ないだろうが、守備に100%の能力を注ぎ込む姿を楽しみにしよう。