「凡百な日本人選手とは優先順位が正反対な、柴崎の試合への入り方」リーガ・エスパニョーラ第36節 ヘタフェ-ラス・パルマス

第35節終了時点でヨーロッパリーグ圏内の7位につけているヘタフェは、既に降格が決まっているラス・パルマスとアウェイで対戦。ラス・パルマスのホームスタジアムは1000人もいないんじゃないかというぐらいのガラガラぶり。

怪我人が連発しているヘタフェは4-4-2のフォーメーションで、ディフェンスラインのアルバとレドンドはリーグ戦初先発、柴崎とボランチでコンビを組むポルティージョはリーグ戦2試合目というフレッシュなメンバー。対するラス・パルマスは4-2-3-1のフォーメーション。

序盤からヘタフェは自陣でコンパクトなゾーンを作り、ラスパルマスの縦パスに対してコンパクトに守って厳しく行く守備。対するラス・パルマスは堅い中央を避けてサイドチェンジを使い、サイドの高い位置で基点を作ってヘタフェ陣内に攻め込んで行く。

ヘタフェの攻撃は、中盤での組み立てという概念が無く、DFラインからサイドを走らせるか前線への長いボールが中心で、柴崎はほとんどゲームメイクさせてもらえない。その代わり守備で走り回っているのだが、やはり基本的にはトップ下的な守備で、ボールホルダーにプレッシャーはかけるが奪い切るところまでは行かず、中盤の1対1で競ってもフィジカルで弾かれてしまう。

ラス・パルマスは序盤にセットプレーからガルベスが二度も フリーでヘディングを放つが、どちらも運良く失点には繋がらず、前半の終わり頃にもセットプレイの流れからPA内で強烈なボレーを打たれるがこれも枠外で命拾い。結局、柴崎のボールタッチ数は12回強という少なさで、逆にラス・パルマスのボールポゼッションは実に70%という一方的なスタッツで折り返す。

後半もいきなりDFラインがあっさり裏を取られてシュートを打たれる危なっかしいヘタフェ。そしてCKからまたまたまたガルベスがフリーでボレーも、3度目もゴールポストをかすめてゴールが遠いラス・パルマス。

ただ前半に比べると、後半はアンカー的な役割をポルティージョに任せ、柴崎は前後左右に幅広く動き回るようになった事でヘタフェの攻撃が一変、後半20分に柴崎がカウンターから左サイドを単独で抜け出すも、相手にギリギリ追いつかれてファールを取られてしまう。さらに23分には柴崎のスルーパスからアマトがシュートもラス・パルマスGKチチソラの寄せに弾かれる。

さらにヘタフェは31分にカウンターから完全に抜け出したアマトのクロスをホルヘ・モリーナがフリーで合わせたが外に外れ、GKグアイタからのフィードにアンヘルが抜け出すもシュートはクロスバーと、立て続けに決定機を作り出す。ラス・パルマスも36分にスルーパスから抜け出し、2分後にはセットプレイからのこぼれ球をPA内至近距離からシュートを放つもヘタフェGKグアイタが鋭い反応でセーブ、こちらも決められない。

そしてスコアレスドローの雰囲気が漂い始めた後半43分、GKチチソラからDF、そしてボランチとい繋いだラス・パルマスの緩慢なパスを狙って柴崎がタックルでボールを奪うと、モリーナからのパスをアンヘルが決めてヘタフェがとうとう先制点をゲットする。柴崎もフリーだったけど、まあ仕方ないか(笑)。

ラス・パルマスはその後も何本かシュートを放つが最後まで得点は挙げられず、結局シュート数で23対10、ポゼッションで68対32とスタッツでは圧倒的に劣勢だったヘタフェがワンチャンスをものにして勝利、ヨーロッパリーグ圏内の7位をガッチリとキープした。

柴崎は前半こそ上手く試合に入れず、ボールタッチ数が極端に少なく触ってもミスになったりしていたが、徐々に体を張った守備で試合のペースに慣れて来ると、後半は一気にチームの攻撃のリズムを作り出す存在になった。普通の日本人選手なら、これだけパスが来ないと焦ってボールに触りたい一心であちこち動き回ってしまうところだが、柴崎はまず戦術や守備をこなしながら自分をフィットさせて行くところが、並の頭脳ではない事を証明している。あと2試合、しっかりアピールしてW杯メンバー行きを狙ってもらいたい。