「オールド・トラフォードの観客まで”リアクション”させてしまった、モウリーニョ監督の思わぬ誤算」UEFAチャンピオンズリーグ ベスト16第2レグ マンチェスター・ユナイテッド-セビージャ

プレミアリーグでチェルシー、リバプールと上位対決を連勝して波に乗っているはずのマンUが、ホームでリーガ・エスパニョーラ5位のセビージャ相手に敗退というまさかの結果になってしまったチャンピオンズリーグのベスト16。

では何がマンU敗退の原因になったのか、興味があって試合を見てみたのだが、正直これと言って大きな原因は見つからず、セビージャのほうがシュート数では上回っていたが決定機の数自体はそれほど多くなく、マンUに先制点さえ入っていればあっさり勝ち抜けが決まっていた試合だったように思う。が、そういうノーマルな試合運びに持っていったモウリーニョの姿勢が、結果論ではあるが運命を決めてしまったのかもしれない。

4-2-3-1のフォーメーションを取るセビージャに対し、マンUは4-3-3という形で臨んで来た。これはいかにも現在のトレンドで、セビージャのボランチとトップ下にマンマークで中盤の3人を当ててパスワークを封じる事が目的で、しかも長身のエンゾンジに対してはフェライニを当てるなど、明らかにフィジカルでのマッチアップを重要視した対策であった。

ただ、試合開始直後はその狙いは試合から全く伺えず、マンUがホームの勢いに乗ってルカクにボールを集め、マッチアップしたセビージャCBケアーがデュエルで負けている間に、どんどんセカンドボールを拾って連続攻撃を仕掛けていて、これが続けばマンUが得点するのは時間の問題に思われた。

しかし前半10分過ぎからとたんに勢いが落ち、そこからは中盤マンマーク気味のリアクションサッカーに変貌、しかし連戦をこなしていて疲れが見えるDFラインはあまり人に激しく行かず、バイタルのスペースが空いたところでセビージャの選手に入り込まれ、決定的では無いにせよシュートの本数を稼がれてしまう。

後半になると、さすがにモウリーニョもチームのネジを巻いたのか、前半よりはバイタルをケアする意識が強くなって、高い位置でボールを奪ってからサイドでラシュフォードやリンガードが切れのある攻撃を見せるようになったが、今度はルカクとサンチェスが消えてしまってせっかくのサイド攻撃を生かせず。

そして後半29分、バレンシアのミスからセビージャがカウンター、途中出場で入ったベン・イェデルがサラビアからの縦パスを中央で絶妙なトラップ、すぐさまシュートをゴール右に決めてセビージャがアウェーで先制ゴールをゲットする。さらに4分後にもCKからフリックしたボールをベン・イェデルが押し込みセビージャが2点目。

そこからマンUは目が覚めたかのようにマタ、マルシャルを投入、マタのダイレクトクロスなどでチャンスを作るものの時すでに遅し。後半39分にCKからルカクが豪快にセビージャゴールに蹴り込み1点差にしたのがせめてもの意地という感じで、結局合計スコア2-1でセビージャが勝利、マンUはベスト16で姿を消すことになった。

それにしても、解説の粕谷氏も指摘していたが、2点を取られてもオールド・トラフォードの観客が静かだったのは驚いた。これがサー・アレックス・ファーガソン監督時代だったら烈火のごとく発破をかけまくり、観客の大声援に押されて選手は猛攻を仕掛け、審判まで雰囲気に気圧されて「ファーギータイム」を設けてしまうなど、伝説的な反発力があったのにだ。

確かにチェルシーやリバプールとの激戦を戦って、チームに疲れや精神的な緩みはあったのかもしれないが、モウリーニョの徹底して相手を研究する「リアクションスタイル」が、サッカーの内容だけじゃなく選手のメンタルやオールド・トラフォードの雰囲気までリアクションになってしまった事が、真の敗因であるような気がしてならないのである。