「クルピのスロースターターは予想通り、ただしスタートラインは30m手前」ルヴァンカップ グループC ガンバ大阪-サンフレッチェ広島

期待のクルピ監督が就任しても未勝利が続き、ルヴァンカップではコンビネーション作りを優先してリーグ戦からベストメンバーを継続するも、同じく今期から城福監督が率いているサブ主体の広島相手にホームで0-4と惨敗したと聞いて、いったいどういう事になっているのかと思って試合を見てみた。

ガンバは1トップに復帰のアデミウソンが入り、2列目が倉田、遠藤、ファン・ウィジョ、ボランチが福田と市丸の4-2-3-1で、渡と工藤が2トップになった4-4-2。

ガンバのサッカーはいかにもクルピらしく、最初からSBがかなり高い位置を取ったビルドアップでサイドに基点を作りつつ、相手の守備をワイドに広げて中からも縦パスを通す形で、確かにそれが上手く行って美しいパスワークになる瞬間もあるんだけど、その代わりあまりにもミスが多過ぎた。

そしてクルピは守備戦術を構築するのはセレッソ時代から不得意で、主に選手同士のコンビネーションを作っていく中で守りの形を作っていく監督なので、シーズン序盤はザルなのが標準仕様なのだが、ちょっとこの試合はあまりに酷過ぎた。

もともとSBが上がっている上にCBの押し上げが弱く、若手を並べたボランチは誰が前に行って誰が後ろをカバーするかの役割分担が無く、どちらも同じような位置に横並びになっているので、あっさりとSBの裏を取られた後は、広島の2列目選手の飛び出しに対してCBとボランチは全く付いて行けず、その間をスコスコと人とボールが通ってシュートまで持って行かれる。

広島は前半の9分に、右サイドの突破から中へ繋いでシュート、ガンバGK東口がかろうじて弾いたボールを工藤が押し込んで先制点を奪ったのだが、その直前に全く同じような形で2度の決定機を作られており、いかにガンバの守備が修正力を持ち合わせていない事が良く分かるシーンだった。

今シーズンが始まる時に、広島で城福監督が成功するかどうかは、理想のムービングサッカーを取るか、現実の甲府式カウンターサッカーをするかがポイントと書いたのだが、幸いにして今のところは現実モードのようで、この試合ではコンパクトな4-4-2の3ラインを形作り、SBはあくまでPAの幅をキープしてサイドはSHがカバーするという、緻密な連動は無いものの固い守備を作っていた。

そこからボールを奪うと、シンプルにサイドの飛び出しにパスを合わせ、2列目がインナーラップでどんどん攻撃参加して相手の守備陣が戻り切る前に攻め切ってしまう。こういうサッカーは、中途半端なポゼッションチームには無類の強さを発揮するもので、この試合ではガンバ相手に面白いように得点を積み重ねて行った。

ガンバも、前半の終わりごろから後半の10分頃までは、ポンポンと小気味よくパスを繋いで連続攻撃を仕掛けていたのだが、かつてのセレッソとは違って乾のようなドリブラーや、香川のように狭いスペースでも得点に繋がるプレイが出来る選手がおらず、アデミウソンはともかくファン・ウィジョも倉田も、もちろん遠藤もゴール前での強さや決め手がなく、パスを回してからどう点を決めるかという緒が見つけられないのは苦しい。

昨日、U-20ブラジル代表のマテウスというボランチの選手を獲得したとのニュースがあったが、ボランチは当然穴ではあるんだけど、これから上位を目指す上で補強をしないといけないポジションはそれ意外にもたくさんあるわけで、これからそこをクルピ監督がどう立て直して来るのか。

才能のある選手を抜擢して適材適所のポジションで起用、ガチガチの戦術ではなくコンビネーションでチームを作ることにより、選手の自律的な成長と粘り強さを両立させるのがクルピサッカーの真骨頂だが、現時点では時間も人もあまりに足りてない状況で、ガンバサポーターにとってはまだまだ厳しい月日が続きそうである。