長友のガラタサライ移籍は、日本サッカーにとっても世界の戦術的にも1つの時代が終わった証明である
昨日、ヨーロッパの冬の移籍市場が締まり、インテルで出番を失っていた長友がトルコのガラタサライに移籍する事が発表されました。一応、形式ではレンタルという事になっていますが、年齢から考えて事実上の一方通行である可能性は高いでしょう。
もうすぐ出産を控える状況で、悩んでた自分に妻が背中を押してくれた。
何も気にしないで、長友佑都のサッカー人生のことだけを考えて決断して。
僕は新たな挑戦を決めた。
妻の強い覚悟に大きな尊敬と感謝を抱き、そして妻をサポートし、応援してくださるみなさんに心から感謝します。— Yuto Nagatomo | 長友佑都 (@YutoNagatomo5) 2018年2月1日
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長友佑都のガラタサライ移籍の裏にあった親友スナイデルの助言「考えずに行け」 (GOAL) – Yahoo!ニュース
ガラタサライの監督はファティ・テリムで、長友のようなプレイスタイルを好む事は間違いないでしょうし、あのクソ暑いぐらいに熱狂的なファンが詰めかける、ガラタサライのスタジアムで長友がプレイするのは楽しみではありますが、やはりこれで20年間続いていたセリエAの日本人選手在籍記録が途絶えてしまうのは、中田英寿がペルージャに移籍した時から苦心してPerfecTVのアンテナを設置したりして活躍を追い続けて来た私にとっても、ひときわ寂しいものがあります。
しかし残念ですが、監督の好み云々ではなく世界的な戦術の潮流として、既に長友のような小兵SBが高いレベルのリーグで生きて行くには難しい時代になっているのも事実です。
欧州のトップリーグで、一時期は炎が広がるように流行した3バック戦術が、これまた潮が引くように退潮して行き、今はまた4バックが主流になっている事はここでも散々書いて来たわけですが、それは単に昔の4バックにただ戻ったわけじゃないんですよね。
3バックが一時期4バックに対して優位に立ったのは、攻撃時に5トップになる事で4バックに対して数的優位を作り、SBの外側で前線に上がったWBが基点を作って攻める形が効果的だったからです。それも単純にクロスを上げるのではなく、WBに対して守備側のSBがチェックに来た時に内側のCBとの間に生まれるスペース、いわゆる「ニアゾーン」を利用する攻めが猛威を振るいました。
ゾーン・ディフェンスのセオリーでは、ニアゾーンが空いた場合はボランチの一角が下がったり、SHがニアゾーンへ飛び込む選手に付いて行くなど中盤のスライドで対応する事になってますが、それを確実に遂行出来るのはアトレティコ・マドリーなどスペインリーグの一部チームぐらいで、ほとんどのチームは対応しきれず簡単にニアゾーンから崩されてしまっていました。
そこで対応策として考えられたのが「SBのCB化、SHのSB化」です。つまり、相手のWBが上がって来てもSBは4人目のCBのようにPAの幅から外に出ず、代わりにSHがSBの位置まで下がるという形で、中盤が横にスライドせず縦の選手だけで対応できるので、戦術練度が低いチームでも3バックに対抗できるようになりました。逆に3バックは、3トップを当てられてビルドアップに苦しむ事が多くなり、徐々に劣勢となりつつあります。
従って、SBはCBのように身長が高くてフィジカルがあり、ビルドアップが可能な選手、SHは運動量があってなおかつスピードやドリブルなど単独で崩せる選手が求められるようになっているのです。そう考えると、日本人選手の中でも酒井宏樹や原口、乾、中島翔哉が高い評価を受けている理由が分かるはずです。逆に、長友や宇佐美のような選手に対する需要はますます少なくなるでしょう。
今後、背の低い選手が生きる道はドリブラーとしてSHやWBになるか、稀有な得点力があればトップ下ぐらいになってしまう可能性は高いです。単にテクニックが優れているだけの日本人選手にとっては、さらに厳しい時代がやって来る事は避けられそうにありません。
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