「蹴るだけになった後半戦は、ハリルホジッチの”悪い影響”なんだろうか?」高円宮杯 全日本ユース 決勝 サガン鳥栖U-15-FC東京U-15深川

昨日は、U-15世代今年最後の大会となる、高円宮杯全日本ユースサッカー選手権の決勝が行われ、サガン鳥栖U-15がPK戦の末にFC東京U-15深川を下し、夏のクラブユース選手権に続いて2冠を達成した。

どちらもフォーメーションは4-4-2で、どちらもゾーン・ディフェンスがベースで攻守の切り替え、デュエルを重視した同じスタイルだなと思った瞬間、鳥栖はボランチの西村からのスルーパスに長身FWの田中禅が抜け出し、シュートは東京GK熊倉が弾いたがボールはネットの中へ転がり、あっという間に鳥栖が先制点を奪う。

鳥栖はハードワークの守備を中心に、攻撃は田中に長いボール集めてセカンドボールを拾うパターンが徹底されているのに対し、東京はボールを奪ったらサイドチェンジという狙いは分かるのだが、鳥栖のプレッシャーを受けて全体が押し下げられている上に鳥栖の戻りが速いので、ほとんど有効な攻めが出来ない状態。

しかし前半も25分を過ぎると鳥栖のプレスが弱まり、徐々に東京が中盤でボールを持てるようになると、前半37分に鳥栖GK田中勇輝が蹴ったボールを東京がカット、パスを受けた青木が冷静にチップキックでGKの頭を越すゴールを決めて追いつき、前半を折り返す。

後半も東京がそのまま優勢を保ち、中盤をダイアモンドのような形にしてキャプテンの常磐がトップ下の位置で笹倉と絡んで高い位置でポゼッションするも、人数をかけて粘り強く守る鳥栖の守備をなかなか崩せない。そのうちどちらもリスクオフ重視の蹴り合いになって延長戦へと突入。

そして延長前半6分に試合が動く。東京がFKから青木が頭で折り返すと、ニアに飛び込んだ常磐がヘディングで押し込み勝ち越し点を上げる。その後は8分に鳥栖の田中が胸トラップからシュート、10分に東京がゴール前でFKとチャンスはあったが決められず、このまま東京が逃げ切るかと思われた延長後半ロスタイム、鳥栖がPA内の間接FKから最後は坂口が押し込み劇的な同点ゴール、試合はPK戦へともつれ込む。

PK戦ではどちらも5本全てを成功させたのだが、専攻の東京6人目が失敗して鳥栖のチャンスと思ったら同じく失敗。東京は命拾いしたなと思ったら7人目がまた失敗、2度目はきっちり鳥栖が決めて勝負あり。鳥栖が夏の大会に続いての栄冠になった。

試合展開としてはジェットコースターのようで面白かったのだが、気になったのは後半途中からどちらもひたすら蹴り合いの試合になってしまった事。過密日程でのカップ戦決勝、体力が続きやすい40分ハーフという影響もあるのだろうが、仮にもJユースであればもっとボールを繋ぐサッカーをやって欲しかったなと。

確かにハリルホジッチは、選手にデュエルや速い攻撃を無理強いしているように見えるが、それは今までの日本に欠けていた要素だからこそ強調しているのであって、本来は速攻も遅攻も出来て当たり前の話であり、それを戦況によって使い分けられるのが世界レベルでは常識なのだ。

E-1選手権韓国戦の惨敗で、またハリルホジッチの速いサッカーが悪玉視されているが、本当の問題はそこじゃない。戦況を見ながら選手自身が柔軟にチームを意思統一出来るようにならなければ意味が無い。それをひたすら監督のせいにしているうちは、決して日本は世界レベルに達することが出来ないだろう。