「これこそゾーン・ディフェンスのお手本、乾も完璧にタスクをこなす」スペイン・リーガエスパニョーラ第16節 エイバル-バレンシア

順位でも得失点差でもレアルを上回る成績で、バルセロナに次いでリーグ2位に付けている好調バレンシアを、強い雨が降り続くホームに迎えたエイバル。乾ももちろん左SHとしてスタメン出場。

両チームともにフォーメーションは4-4-2で、まさにスペインらしいゾーン・ディフェンスのお手本のようなサッカーを展開、エイバルは強豪バレンシアに対して一歩も引かず、ラインを高い位置に保ってボランチが素早いアプローチで相手にカウンターを許さない。前から後ろまでコンパクトに、全員が意思統一された守備組織は、韓国戦を見た後だと羨ましい限り。

そして攻撃では右SHのアレホへのサイドチェンジを軸に、高い位置で基点を作ってからボランチとSBが連携してサイドを崩し、鋭いクロスを2トップに集める形を作る。組み立てが右に偏る分、乾がボールに触る回数はそれほど多くないが、忠実なプレスバックでボールを奪ってからサイドへ飛び出し、前を向いてボールを持てばキレのあるドリブルで対面のSBモントーヤを翻弄、非常に印象的な働きぶりを見せる。

それでも地力に勝るバレンシアは、前半38分に波状攻撃を仕掛け、何度もゴール前でエイバルに対してクロスを浴びせるが精度を欠いて得点ならず、ロスタイムにはCKからロドリゴが決定的なヘディングシュートを放つが枠の外。そして後半もバレンシアが局面で優位に立って試合のペースを握ったのだが、そのムードを一変させたのが乾。

後半3分に、乾が中盤でボールを奪った場面からカパのパスは相手にカットされるが、その後ゴール前で混戦になったところをボランチのジョルダンが拾い、左でフリーになっていた乾にパス、これを乾がニアに正確なシュートを決め、本人にとっても今期初ゴールとなる大きな先制点をゲットする。しかしバレンシアもすぐさま反撃、後半12分に右への素早い展開から最後はペレイラがクロス、エイバルのDFが足を伸ばしてコースが変わり、それをミナがきっちり押し込んで同点に追いつく。

そこからしばらくはバレンシアが優勢、激しいプレスでエイバルは得意のサイドチェンジを封じられ、アレホと乾にも厳しくマークが付いて攻撃の形がほとんど作れない。が、何とかそこを凌いで後半も30分を迎えると、運動量が落ちたのか引き分け狙いに切り替えたのか、バレンシアのラインが下がってファールで止める場面が増え、エイバルにセットプレイのチャンスが何度もやって来る。

すると後半41分、カウンターから右サイドを走るアレホにパスが渡り、アーリークロスを中へ飛び込んだジョルダンが相手に競り勝ちヘディングで勝ち越し。終盤には乾がサイドでボールをキープするなどエイバルが試合をコントロール、そのまま2-1で逃げ切った。

これでエイバルはリーグ10位に浮上。MOMはアレホに与えられるべきだが、乾は得点だけでなく攻守でチームを助け存在感を発揮、戦術面でもスペインのレベルに十分ついて行けている事を証明し続けている。E-1に出場した代表未満の国内組は、乾と酒井宏樹のプレイを見て、もっと危機感を持つべきだろうね。