「鹿島の胴上げを許さなかった、名波監督と中村俊輔の執念」J1第34節 ジュビロ磐田-鹿島アントラーズ

それにしても・・・一時は2位に対して勝ち点差8を付け、今期はJ1史上最大勝ち点の74を上回って優勝するだろうとさえ言われた鹿島アントラーズが、ラスト2試合でまさかの未勝利、J1のタイトルのみならず今シーズンは無冠に終わるとは一体誰が想像したであろうか。

前節の柏戦については、確かに最終節まで盛り上げたい世間の「空気」があったように思うが、最終節の磐田戦については植田のヘディングゴールがファールに取られた不運はあったものの、内容的には鹿島らしくないプレイの雑さ、焦りによる自滅だったように思う。

磐田のフォーメーションは3-4-2-1で守備的に行くのかと思いきや、前半からWBとウイングがサイドにプレッシャーをかけ、鹿島の得意パターンであるサイド攻撃を封じにかかった。攻撃では川又のポストプレイと中村のボールさばき、アダイウトンのキープ力でしっかりボールを確保する。

普段は金崎がサイドに流れて数的優位を作ってじっくり攻める形が多い鹿島は、この試合の前半は金崎が中にいる形が多く、前半14分に右SB西が負傷交代した影響でいつもの流れるような攻撃が見られず主導権が握れない。単発のカウンターでチャンスはあったが、試合のペース的には磐田のものだった。

後半になると鹿島がやや落ち着きを取り戻し、サイドで基点を作る本来の攻撃で磐田の守備を下げさせ、後半7分には遠藤のクロスから完全にフリーだった金崎がシュート、16分にはサイドに流れた金崎からのクロスに土居が合わせるなどの決定機を作り、一気に鹿島のほうへ試合が転がるかと思われた。

しかしそこに立ちはだかったのが中村俊輔。カウンターになりそうな場面では全速で走ってボールにアタック、味方がボールを奪うとすぐさま空いたスペースに走ってパスを受け、ボールをキープして落ち着かせるなど、要所要所でベテランらしく試合をコントロールする。

たださすがに磐田も後半35分を過ぎてからは運動量が落ち、鹿島が完全に試合を支配するも、レアンドロやレオ・シルバがボールを持ちすぎてミスになり、オフサイドに何度も引っかかるなど鹿島らしくないチグハグな攻撃に終始、結局5分の長いロスタイムにも試合が動かずスコアレスドローで終了。

裏で行われていた、2位川崎と大宮の試合は川崎が5-0の大勝で終わり、試合終了時点で鹿島の結果が伝えられると、ピッチは歓喜に湧きスタンドには大歓声が広がった。思わずピッチに臥せって動けなかった中村憲剛の涙には、こちらもついホロリとさせられたね。

鹿島ファンの人には悪いが、日本最高クラスのゲームメイカーでありながら、ずっとタイトルや代表に縁が無かっただけに、彼にこういう瞬間がやって来た事は本当に嬉しく思う。川崎フロンターレの選手、監督、関係者、そしてサポーターの皆さん、本当におめでとう!