「シンデレラストーリーの縁の下は、戦術に対する真摯な姿勢で出来ている」J2第41節 V・ファーレン長崎-カマタマーレ讃岐

今日の第41節は、昇格争いのライバルである名古屋が敗れ、福岡も松本と引き分けたために、讃岐に勝てばJ1昇格が決まるお膳立てがされ、クラブレコードである22000人の大観衆が詰めかけた中で行われた試合。

こういう試合になると、だいたい選手が固くなって普段の力が出せずに終わるパターンが多いわけだが、長崎もまさにその罠に嵌った立ち上がりになった。

4-4-2フォーメーションの長崎に対し、讃岐は3-1-4-2で中盤を厚くしたプランがハマり、互いにラインを上げてボールが激しく行き交う展開の中で、プレッシャーからか全体的に出足が鈍い長崎に対し、讃岐がセカンドボール争いで優位に立ってリズムを作っていた。

しかし長崎の強さは、そういう苦しい展開になってチームの形を貫ける事にあった。27分に島田のパスから飯尾が綺麗に右サイドを抜け出し、ニアに入ったファンマの裏に飛び込んだ乾のももに当たったボールがゴールイン、長崎が大きな先制点をゲットする。

その後も勢いに乗った長崎は、ポストに当たったファンマのシュートなど決定機を作ったがものに出来ず、そうなるとやはりサッカーの神様にしっぺ返しを食らうもので、後半17分に左サイドを抜け出した馬場のクロスに、足から飛び込んだ木島がコースを変えて同点ゴールを決める。

これでモメンタムがまた讃岐に流れていく中、ベテランのゴールが運命の針を動かす。右サイドに流れたファンマのクロスはDFに跳ね返されるも、ゴール前にこぼれたボールを前田が冷静にインサイドで流し込んで勝ち越しゴール。これで意気消沈していたスタジアムが一気に盛り上がる。

さらに長崎は、また後半37分に右サイドを深くえぐった碓井からグラウンダーのクロスが送られると、ファーに走り込んだ翁長がきっちり押し込み3点目、これで試合は決まってしまった。ロスタイムの4分も長崎が試合をコントロールして試合終了、長崎はチーム成立12年、J2昇格から5年目の快進撃でJ1昇格を決めてみせた。

とは言え、昨年は15位の成績に終わり、ご存知のように開幕前は経営危機によってライセンス剥奪でJ3降格の噂さえあったクラブが、J1自動昇格を果たす事になるとは誰も予想はしてなかっただろう。

その逆境を跳ね返して快挙を成し遂げたのは、もちろん社長に就任した高田明氏の手腕も大きいが、この試合で見せたような組織的なディフェンスからのサイドアタックという戦術を、選手が高木監督を信じて全く迷いなく遂行し続けた事にあると思う。

「ゼイワン」「カマターレ」とツッコミどころ満載な高田社長のオンステージで大団円のオチは付けたが、ぶっちゃけこの戦力ではJ1残留は相当厳しいのが現実。長崎愛を訴える社長には有言実行で、しっかり来期に向けて補強をしたもらいたいところだある。