「いてまえサッカーをかなぐり捨てたセレッソ、悲願の初タイトル獲得!」JリーグYBCルヴァンカップ 決勝 川崎フロンターレ-セレッソ大阪

前半開始わずか1分に、ボールを空振りして後逸したエドゥアルドのミスから杉本が決めた時には、この試合はこれから何点入るのだろうかと思った。それが、まさかその1点が決勝点になるとは全く想像も出来なかった。

それは川崎の攻撃が、ゴール以外は圧倒的だった事にある。バイタルで正確にボールを受ける中村憲剛を中心に、三好と家長のキープ力とドリブル、積極的に駆け上がる車屋、エウシーニョがサイドを制圧と、実にセレッソに対して7割近いポゼッションを記録した。

セレッソは何とかPA内に人数をかけて、最後の最後で体を投げ出して川崎の攻撃を防ぐのだが、ボールを奪ってもすぐさま川崎のゲーゲンプレスが襲いかかり、またボールを奪われて二次攻撃を受けるか、ひたすら遠くにボールを蹴り出すのみで全くカウンターのチャンスを作れない。

前半終了間際にも、中村憲剛がPA内でパスを受けてフリーでシュートを放つもかろうじて枠外の決定機を作られ、前半は何とかセレッソが無失点で切り抜けるも、これでは絶対に守りきれないだろうと思った。が、鬼木監督は前半に好プレイを見せていた三好に代えて長谷川を投入、これが結果論だが裏目に出てしまったように思う。

長谷川は気負いもあるのか、ゴール前で積極的にシュートを狙うのはいいのだが精度を欠き、知念が投入されてからは右SBへとポジションを移したのだが、そこでもクロスを度々ミスするなど攻撃のリズムを断ち切り、セレッソの守備に息をつかせてしまっていた。

とは言え、やはり褒めるべきはセレッソの最後まで集中しきった守備である。とにかくサイドはあえて捨てて中央を固め、山口とソウザは攻撃ではミスが多かったものの守備では完璧なフィルタリングを見せ、CBは川崎のクロスを跳ね返し続けた。MVPは杉本だったが、真の立役者はセレッソのボランチとCB、そしてGKの5人だろう。

そしてセレッソは耐えに耐えて、後半ロスタイムにカウンターからソウザがきっちり決めて歓喜の2点目。これで完全に勝負は決まり、どちらも勝利すれば初タイトル同士の対戦は、セレッソの方に軍配が上がり、12年前にJ1優勝をホームで逃した悔しさを見事に晴らす事となった。

その2005シーズンは、西澤、森島、古橋という代表クラスの前線が猛威を奮った「いてまえサッカー」で優勝をあと一歩で逃し、今期は柿谷、清武、杉本という同クラスのタレントが守備で粉骨砕身してタイトルを勝ち取ったという事実に、サッカーというスポーツの奥深さを改めて痛感させられた。

とにかくセレッソの選手、監督、関係者、そしてサポーターの皆さん、本当におめでそう!