「完成したのにチームを壊すトゥヘル、完成しないうちにイジってしまうボス」UEFAチャンピオンズリーグ グループH APOEL-ボルシア・ドルトムント

ここまでグループリーグ2連敗で、決勝トーナメント進出には絶対に勝ち点3が欲しかったドルトムントだが、APOELホームで迎えた第3節はずっと試合を支配しながらも結局1-1のドローで終了、レアルとスパーズが引き分けたために2位とは勝ち点6差で詰まらず、早速グループ敗退の崖っぷちに立たされる事になってしまった。

スタッツを見ても、ドルトムントはボール支配率66%だったのに、シュート数が16本で枠内シュートが4本と、APOELの倍に留まっているのを見ても、いかに効率の悪い攻撃をしていたかというのが良く分かる。その最も大きな理由は、こうすれば得点が取れるという形が今のドルトムントには無いことだと思っている。

この試合で香川は左のインサイドハーフで先発していたのだが、同じポジションで出ていた2015年シーズンは、3トップのオーバメヤン、ロイス、ムヒタリアンがポジションを変えながら攻め込み、相手が中央を固めて空いたスペースにSBのギンターがオーバーラップ、そこに香川のサイドチェンジが通ってダイレクトの折り返しをオーバメヤンがスピードで抜け出してゴール、という必殺のパターンがあった。

しかし今は、ウイングのプリシッチとヤルモレンコはサイドに張ったままで、オーバメヤンが流れたりSBが上がるスペースを最初から潰しており、オーバメヤンは中央で窮屈なプレイを強いられて持ち味のスピードが活かせず、相手のゾーンを左右に揺さぶるという引いた相手を崩す常套手段が全く出来ていない。序盤こそ、香川のアイデアとパスの精度でチャンスは作ったのだが、相手がドルトムントの攻撃に慣れて来て香川にマークを付けるとすぐに沈滞してしまった。

後半になって香川とゲッツェのポジションが左右入れ替わり、また戦術の狙いを変化させたのかなと思ったのだが、プリシッチとヤルモレンコのウイングまで一緒に変わってしまったので、結局プレイのリズムが合っているヤルモレンコとは遠いままで、香川のサイドには単独で無理なドリブルを仕掛けるばかりのプリシッチという図式は変わらず、やはりコンビネーションがあって初めて活きる香川の存在感は消えたまま。レベルは違えど、代表のニュージーランド、ハイチ戦を見ているような閉塞感だったね。

ボス監督はターンオーバーで選手を入れ替えての起用が多いのだが、そのためメンバー間の共通意識が薄く、皆が手探りでプレイしていてビジョンの共有が無い。どう見ても病気の影響でスタミナに問題があるゲッツェをずっとスタメンで起用し続けているし、ドイツ人のスターを復活させたいクラブの意向もあるのだろうが、どうも勝つためのチーム作りが徹底されていないという疑念が拭いきれない。

トゥヘル監督は、上記のような攻撃の形を作るのは得意だったが、上手く行っていた形をすぐに壊してしまう癖があったが、ボス監督の場合は上手く行きかけているチームをわざわざ弄って、結局いつまで経ってもチーム力が積み上がって行かない繰り返しをしているように見える。少なくとも個人的には、香川とヤルモレンコは同サイドに置いて、ゲッツェはサブか起用してもウイングでチャンスメイカーに専念させるべきだと思うんだけどねえ・・・