「ドルトムントが”破壊の鉄球とおなべのふた”路線を撤回してしまっては意味が無い」UEFAチャンピオンズリーグ グループH トットナム・ホットスパー-ボルシア・ドルトムント

レアル・マドリーと同じグループとあって、どちらかがグループ敗退の運命となる可能性が高い両チームの対戦は、ホームのスパーズがまず3-1で快勝、ドルトムントにとっては得失点差も含めて厳しい立ち上がりになってしまった。

スパーズのフォーメーションは3-1-4-2で、ドルトムントは4-3-3という形。しかしドルトムントの中盤はアンカーがシャヒン、左右のインサイドハーフが香川とダフードだったが、香川が上がり目のトップ下のような位置取りになっていた。

ドルトムントの戦術は、とにかくサイドバックが最初から非常に高いポジションを取るのが特徴で、ほぼ2-1-4-3のような形になるため、実質的には後ろ3人で守備をする事になり、案の定前半の4分と15分にカウンターからサイドを破られ、ソン・フンミンとハリー・ケインに得点を許してしまった。結局前半にスパーズが放ったシュートは2本で、そのどちらも得点になった事が試合を決めてしまったと言える。

その問題のドルトムント守備陣だが、トリャン、ソクラティス、トプラク、ピシュチェクという4人で、トリャンはU-21世代の選手で守備が軽く、トプラクはラインコントロールがまずくてハーフウェーライン付近から何度も裏を取られ、ピシュチェクは上がったまま戻って来ず、一番頼りになるはずのソクラティスがケインに弾き飛ばされたのではどうしようもない。GKビュルキも、ファーをDFが切っているのにニアにあっさり連続で決められたのもいただけない。

攻撃は悪くなかった。ハイラインで相手を押し込んでスペースが無い中で、香川が上手くボールを受けて攻撃をリンクさせ、香川からの落としをダイレクトで決めたヤルモレンコのゴールを始めとして、確実にサイドの選手を活かしていた。が、オーバメヤンはあまりボールをキープする意図を持たず、プリシッチは自ら仕掛けてシュートを狙うばかりで判断が遅く、香川から先のコンビネーション、崩しの意識が見られなかったが残念だった。

後半10分に、ドルトムントは右サイドからのクロスに対してスパーズのDFラインと入れ替わるように抜け出したオーバメヤンのシュートが、完全にオンサイドなのにオフサイドにされてしまう大誤審。その5分後に、ピシュチェクが中に絞りすぎて ケインが左サイドでフリーになり、ケインの股を狙ったシュートがピシュチェクの足に当たってゴールに入り、これで試合が決まってしまった。

香川も後半はプレイ機会が減って試合から消えてしまい、後半21分にゲッツェと交代。しかしドルトムントのペースが上がらず、そこからはかえってスパーズにペースを握られ、試合終了間際のヤルモレンコのシュートもブロックされて3-1のまま試合は終了した。

ドルトムントは結果的にザル守備での完敗になったわけだが、ここから下手に守備的な修正を施してしまっては、トルシエジャパンのトルコ戦のように、おそらく中途半端なサッカーになってしまう可能性は高い。もちろん、ハーフウェーライン上でのラインコントロールの修正は必要だが、より前線でのコンビネーションとサイド攻撃、ゲーゲンプレスの連動を高める事が重要だろう。そのチーム作りに、香川が貢献出来る余地は大きいと思っている。