「風間同志の革命的思想を、結果であっさり否定してしまうシャビエル」J2第28節 町田ゼルビア-名古屋グランパス

風間同志による革命サッカーの旗印のもと、絶え間なくスペースへ動いてトライアングルを作り、ショートパスで繋ぐサッカーで得点と失点を量産する名古屋グランパスと、アトレティコばりの縦横にコンパクトなゾーン・ディフェンスを相馬監督が構築している町田ゼルビアという興味深い対戦。

戦術的な相性で言えば、狭い攻撃対狭い守備では後者の方に分があると見るのが普通で、前半5分に名古屋左サイドでの縦パスをカットし、奥山のクロスが相手に当たった浮き球を平戸がボレー、これがゴール左隅に決まってあっさりと町田ゼルビアが先制点をゲットする。

その後も町田は、高いラインを保ちつつ中盤の鋭い出足でボールを奪い、相変わらずポジションバランスを考えずに前がかりになり、ゴール前の守備については個人の対応におまかせの名古屋に対して、何度もチャンスは作ったものの名古屋GK楢崎のファインセーブもあって追加点は奪えない。

それでも名古屋の自滅は時間の問題かなと思ったのだが、その流れを名古屋のガブリエルシャビエルが1人で全て変えてしまった。「サイドは空いてるスペース」「中央は狭い」の考えは捨てろ、という”風間語録”に対して「いやスペースあるし」とあっさり否定、前半24分にシャビエルの大きく空いた右サイドへの展開から、リターンをもらったシャビエルがシモビッチに縦パス、これをシモビッチが冷静に決めて名古屋が同点に追いつく。

さらに前半39分には、「相手を崩さなくても1点は1点」とばかりに、シャビエルのFKを新井が頭で合わせ、ボールは町田GK高原がかろうじて弾いたものの、ボールがラインを割ったと判定されて名古屋が2点目、その3分後にはまたも同じような位置からのシャビエルのFKを、今度は青木が頭でそらせて瞬く間に3点目をゲットする。

しかしこれを守れないのが風間サッカーの風間サッカーたるところで、後半から一応早めのマンマークで町田の前線へと飛び出す動きを早めに捕まえようとするのだが、町田の執拗なロングボール攻撃の前に全体がズルズルと下がってしまい、町田がバイタルエリアを使い放題な状態になると、19分に左サイドでの繋ぎから井上が完璧なミドルを決め、27分にもまた左サイドからの折り返しを戸高が1度はシュートを防がれながらもこぼれ球を押し込みとうとう町田が同点に追いつく。

勢いに乗る町田はその後も名古屋を攻め立てるが、試合終了間際にゴール前で抜け出した青木が深津に倒されシュート機会阻止で町田はレッドカードを受けてしまう。その判断は間違ってないが、カードの対象はプレイに全く関係していない平戸に出されるという明らかな誤審。これで運の流れが変わってしまったのか、ロスタイムに今度はシャビエルが直接FKを決めて名古屋が勝ち越し、そしてそのまま試合終了。

名古屋のシャビエルは結局1ゴール3アシストの大活躍。そのクォリティ自体がJリーグレベルに無い事は明らかだが、「革命サッカー」にとってはどうなんだろうね。ポアされないか心配。まあ、実際には狭い攻撃も広い攻撃もどちらも必要という現実的な判断で収まりそうではあるけどね。

町田のアトレティコスタイルのゾーン・ディフェンスは、やはりサイドチェンジには弱い事を露呈。アトレティコの場合は、精緻で献身的なディアゴナーレの連動でニアゾーンを埋めているから通用出来ているんだけど、町田はまだそのレベルには至っていない。攻撃でも、アトレティコ式は狭い場所で縦に速く攻めるので、トラップ1つのミスで攻撃が終わってしまう。町田を見るとそういうシーンが非常に多いので、こちらも理念と現実のすり合わせが必要な部分ではないだろうか。