「早くも”普通のチーム”へと変貌した広島がこれから目指すものは?」J1第21節 サンフレッチェ広島-ガンバ大阪

森保監督からヤン・ヨンソン監督へと交代、前節は初陣で初勝利を飾ったという事で、広島がどういうサッカーをするのかに注目して見てみたガンバとの試合だが、まず第一印象としては「突然普通のチームになってしまったな」という感想である。

ヨンソン監督が採用したフォーメーションは4-2-3-1で、前線4人のうち、3人をフェリペ・シウバ、アンデルソン・ロペス、そしてガンバを対談したパトリックというブラジル人トリオで固めて来た。

森保監督が採用していたミシャ式3-4-3サッカーは、前線は大きく動いてボールを引き出し、守備ではファーストプレスを怠らない献身性が求められる難しいタスクが要求され、それゆえ守備にあまり熱心でない外国人選手は使いにくかったのだが、比較的戦術的な約束事を緩く出来る4-2-3-1ならブラジル人で固めても問題ないという発想なのだろう。

そしてその起用は実際に当たり、彼らのキープ力でまず広島が試合のペースを握ると、前半15分に高橋からの長いパスを受けたアンデルソン・ロペスが振り向きざまのシュートを決めて広島が先制点をゲットする。

しかし急造フォーメーションゆえ、戦術的なバランスがまだ上手く取れないのか、広島はリードしてから守備がズルズルと下がってしまい、4バックもディアゴナーレで連動せずそのままPAの幅を保ったまま動かないので、サイドのスペースをSHが下がってカバーする事が多くなり、1トップのパトリックが孤立してほとんど攻撃が出来なくなる。

するとそこまで存在が消えていた、トップ下で先発したガンバの遠藤が存在感を見せ始め、前半の27分にクロスと見せかけた絶妙なシュートを放つと、セットプレイで精度の高いボールを配給、流れをガンバへと着実に引き戻すと、後半2分に左サイドでの崩しからクロスが流れたところを、ファーに飛び込んだ遠藤が押し込みガンバが同点に追いつく。

さらに後半12分にはスルーパスから抜け出したアデミウソンが、やや微妙な判定だったが後ろからタックルに行った水本に倒されたと判断されPK。これをアデミウソン自身が決めてガンバが2点目。試合の流れは完全にガンバへ傾いていたために、これで試合は決まったかと思われた。

ただそこから長谷川監督が打った手が裏目に出た。ファン・ウィジョ、泉澤と投入したのだが連携的にはマイナスで個人での無理矢理な打開が目立つようになり、選手に疲れが出て全体が間延びしてしまう。そして案の定、42分にカウンターからアンデルソン・ロペスが4人いたガンバのディフェンスをこじ開けて同点ゴール。5分のロスタイムにガンバもチャンスは迎えたが決まらず、結局試合は1-1、痛み分けのドローで終わった。

広島は今まで、ユースからの一貫したパスサッカーというのがチームのスタイルだったはずだが、主力選手をガンガン抜かれて仕方ない面があるとは言え、攻撃はブラジル人の個人能力におまかせのサッカーにあっさり変貌してしまったのは少し寂しいものがある。とは言え、まだヨンソン監督としてはチーム作りの過渡期だろうから、これから広島のDNAがどう活かされるのかに注目してみたい。