「スターをかき集めるマルセイユの中で、スタメンに選ばれ続ける酒井宏樹の秘訣」フランス・リーグアン第1節 マルセイユ-ディジョン

しかし酒井宏樹というのは不思議な選手である。全盛期の長友のような圧倒的なスタミナ、スピードとアジリティには及ばないし、内田のようなビルドアップ能力、判断の良さがあるわけでも無いのに、何故かどんなチームでもいつの間にかスタメンにしっかりと収まっている。

フランス1部のマルセイユへ移籍が決まった時には、あんなプライドの高いサポーターが集まっている古豪で、酒井のサッカー頭レベルじゃきっと厳しいだろうと思ったら、すっかり不動のメンバーとなり、しかも今期は数年来悩まされていた財政難から復活し、マンダンダ、ラミ、ジェルマン、そしてルイス・グスタボという各国代表クラスの選手を獲得したにも関わらず、やはり開幕のディジョン戦でちゃっかりスタメンで出場した。

で、肝心のプレイはと言うと良くも悪くもいつもの酒井。前半2分に、いきなりデュエルで抜かれてピンチを迎えてしまうと、11分にはトヴァンへのスルーパス失敗、16分に相手のカウンターにカバーで追いつくも抜かれてシュートを打たれ、22分にはパスを前に出せず危険なバックパスで逃げてしまい、28分にはまたもバックパスを相手に狙われて間一髪、43分は前線への浮き球パスが長過ぎと、ちょっと残念感が溢れる前半であった。

ただ擁護する点があるとすれば、ディジョンの左サイド、キャプテンのSHスリティと長友みたいなSBのハダディがガンガン攻め上がり、そこに右SHのクォン・チャンフンが度々左サイドに流れて攻撃参加して来るので、酒井個人だけでどうなる問題でもなかった。

さらにマルセイユのチームにも問題があり、先発は1トップにジェルマン、アンカーにルイス・グスタボ、CBがラミとロランド、GKがマンダンダと移籍組がセンターラインを占めた事でコンビネーションが整わずビルドアップは安定しないし、左ウイングのパイェが中に入り過ぎて右ウイングのトヴァンがサイドへ押し出され、酒井とトヴァンの縦ラインを相手に切られて得意な形を封印されてしまった。

そんな状況で前半のマルセイユはシュート数がディジョンの8本に対して4本と、ボールを支配しながらもチャンスをほとんど作れなかったのだが、後半からキャプテンでエースのパイェに代えて、カメルーン代表のクリントン・エンジエを投入したガルシア監督の思い切った采配が戦況を一変させた。

エンジエはパイェとは逆に左のワイドに張ってパスを受け、そこからドリブルを繰り出すプレイが特徴で、これによってトヴァンが中へポジションをシフトし、酒井が上がるスペースが出来た事で前半には無かったコンビネーションが復活、一気にマルセイユが攻勢をかけ始める。

すると6分に、中盤から「らしくない」華麗なルーレットでルイス・グスタボが抜け出すと、右サイドに流れたジェルマンにパス、ジェルマンが中へコントロースされたクロスを送ると、右から飛び込んだエンジエが頭で合わせてマルセイユが先制する。その3分後には、カウンターからトヴァンが長いドリブルでPA内まで持ち込むと、そのままニアにシュートを決めてあっという間に2点目をゲット。

酒井も後半は3分にタイミング良くサイドを破るがクロスが大き過ぎ、11分にはサイドからPAまで切れ込むもトラップの方向をミスってクロスを上げるタイミングを失うなど、相変わらず詰めは甘いが見違えるような働きでマルセイユの攻撃に貢献、前半にあれだけ苦しめられたハダディを完全に守勢へと追いやってしまった。

判断やクロスの精度に難があっても、やはりサイズがあってクロスやロングボールを跳ね返し、サイズの割にスピードとアジリティもそれなりにあり、終盤でもスタミナが落ちず実直にサイドを駆け上がるサイドバックというのは、世界レベルで見てもなかなか貴重な存在なのだろう。酒井ほどのサイズは無いけれど、室屋も特性としては似た部分があり、彼も日本よりは海外向きなのではと思っていたりする。

さて試合だが、後半27分にエンジエが今度は左サイドを単独で抜け出し、中へ切れ込んでからシュートを打つと、これが相手に当たってループシュートのような形になって3点目。これでほぼ勝敗は決まってしまい、マルセイユはホームでの開幕戦を3-0で快勝、昨シーズンとは違って幸先の良いスタートを切る事になった。

マンダンダ、ルイス・グスタボ、ラミは無難にプレイし、ジェルマンは裏への飛び出しやクロスに光る部分を見せるなど、新戦力がきっちり計算出来た一方、ガルシア監督としてはエースのパイェを止む無く下げた後での快勝というのは少し頭が痛いところ。エンジエを他のポジションで使うというのも難しく、パイェはプライドが高い選手だけに、今後の火種になってしまわなければ良いのだが・・・

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