「今年は石橋を叩いたフルーム、来期は包囲網を解いて5勝クラブの仲間入りを果たすか」ツール・ド・フランス2017 第19~21ステージ

週末の暑さと日曜日のイベントでヘロヘロになり、月曜は差し歯が取れた上に朝から仕事が満載で、昨日は更新をお休みさせていただきました。で、昨晩は改めてツール・ド・フランスの残りステージを駆け足で見たのでまずはそれについて。

第19ステージは、アルプスからプロヴァンス地方を通って、翌日の個人タイムトライアルが待ち受けるマルセイユまでの、今大会最長ステージ。当然、最後の勝負、翌日の個人タイムトライアルを残した総合争いに絡むチームはまったりムード、そんな中でステージ優勝を狙う20人の大逃げが決まり、最後はゴール前3km地点からボアッソンハーゲンがアタックを決め、そのままアルントを振り切って逃げ切りゴールを決めました。

そして第20ステージ、酒井宏樹が所属するマルセイユのホーム、スタッド・ヴェロドロームをスタートする22.5kmの個人タイムトライアル。よほどのアクシデントが無ければ首位を守るだろうと見られていたフルームは、あえてリスクを犯さず堅実な走りを見せてトップのボドナールから6秒差の3位でまとめた一方、総合3位のウランはイマイチ伸びず31秒差でゴール、そして23秒差で総合2位だったバルデは体調不良に見舞われ大ブレーキ、かろうじて1秒差で表彰台を何とか確保という結果で、これでフルームの総合優勝が確定しました。

これでフルームは、今大会1度もステージ優勝をしないままの総合優勝。このTTでも無理をすれば勝てないステージでは無かったと思いますが、名より実を取った格好です。かつて、エースのウィギンスを挑発しながらアシストしていた時や、メディアの煽りにムキになっていた頃を思い出すと、フルームも随分大人になって落ち着いたなと思いますね。

今年のツールは、例年に比べてタイムトライアルの距離が短く、クライマー向けのコースだと言われていましたが、結局頂上ゴールも3つと少なかったため、登りで決定的な差をつける事よりも、短くてもタイムトライアルで確実にタイムを削る事を優先して練習した、チームスカイとフルームの戦略が見事に当たったと言えます。結局、フルームが2位に付けたタイム差は、2つのタイムトライアルだけで稼いだものでしたからね。

今までのフルームとチームスカイの勝利には、正直「ド」をやっちまったなと思ってしまうような、どこか不自然な強さを常に感じさせ、あまり個人的に気持ちが入らない年が多かったのですが、今年のツールについてはそういう嘘くささが無く、全員の力でしっかりフルームをアシストして助ける姿が印象的で、総合争いが僅差だったというのもありますが、例年以上に見ていて楽しめる年でしたね。

そして最終ステージ、パリ・シャンゼリゼの周回コースは、キッテルやカヴェンディッシュ、サガンといった当代きってのスプリンターを欠く中、最後の直線手前で早めに抜け出したフルーネウェーヘンが、猛追するグライペルを半車輪差抑えて嬉しいシャンゼリゼゴール優勝を飾るという、新戦力の台頭が目立った今大会のツール・ド・フランスを象徴するかのような幕切れになりました。

来年はフルームが、メルクスやアンクティル、イノーらが集う「ツール5勝クラブ」の入会をかけた挑戦になるわけですが、2位のウラン、3位のバルデは登りについてはフルームを超える力を付けており、山岳賞のバルギルも来年は総合を狙う発言をしていますし、今年の山岳でフルームを助けた4位のランダは、スカイを離れて他チームのエースになると言われています。今年のように守りの走りだけでは、来年の勝利は難しくなるかもしれません。

とにかく来年は、今年よりももっともっと熱い展開になってくれる事を期待したいですな!