「ゴール前16%の激坂が、鉄壁だったチームスカイの高い壁を叩き壊す」ツール・ド・フランス2017 第10~12ステージ

今年のツール・ド・フランスを一言で表すと、「平穏」という言葉が一番しっくり来る状態ではないかと思います。ただし昨日までは。

ここ最近は嫌がらせのように組み込まれた石畳や、強風で集団が分断されるブルターニュ地方のコースが序盤に無く、平坦ステージもあまりアップダウンが無くてすんなりスプリンター同士で決着が付く事が多く、第10、11ステージも現在最強スプリンターのキッテルが連勝、ライバルのサガンがリタイアしたのもあって、既に全ステージ半分以上の6勝を挙げるという圧倒的な強さを見せつけています。

そして総合争いでも、チームスカイのクリス・フルームが早くもマイヨ・ジョーヌを確保、最大のライバルと目されていたリッチー・ポートが落車でリタイア、グランツール優勝経験者のコンタドールとキンタナはジロ・デ・イタリアからの疲労を抱え込んで毎回ズルズルと遅れ、第11ステージでは今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネを制したフグルサングが手首を骨折と、勝手にライバルたちが自滅する余裕の展開。

昨日行われた第12ステージは、後半に超級、1級、2級頂上ゴールと連続で峠が連なる中盤戦最大の勝負どころですが、総合争いをする選手が固まったメイン集団の中からは、超級のバレ峠で動いたのがコンタドールとバルギルのみで、それもチームスカイのトレインにあっさり吸収されてアタックは不発。

1級山岳ペイルスルド峠でも、ほとんどのアシストを失ってしまった他チームに対し、チームスカイはまだ3人のアシストを残している盤石の状態で、ライバルたちがアタックするスキを全く与えず、ペイルスルドからの下りでフルームがコースアウトした場面もあったのですが、誰もアタックせずにおとなしく帰還を待つなど、チームスカイとフルームの前に戦意を喪失したようにさえ見えました。

ところが、たったラスト2kmの登りでしかない最後のペイラギュード峠、それも残り400mになって最後の16%勾配区間に入ると、既に先頭に立っていたメイン集団から一気に登りスプリント争いが勃発、先に動いた総合2位のファビオ・アル、反応したロマン・バルデとリゴベルト・ウランのペースにフルームが付いて行けず、ジリジリと差が開き出す。

フルームを牽引していたミケル・ランダが、アシストを諦めてボーナスタイム阻止に追撃するもわずかに及ばす、ステージ勝利はバルデが取り、ファビオ・アルは3位でボーナスタイムを獲得、フルームは結局22秒遅れでゴール。この結果総合争いでは、マイヨ・ジョーヌは6秒差でファビオ・アルの手に渡り、アルから25秒差でバルデ、55秒差でウランが続く結果になりました。

ただフルームは総合2位に落ちたとは言え、第20ステージでは得意の個人タイムトライアルを残しており、おそらくその時点で1分以内の差に押さえていればまだ優勝は安全圏でしょう。つまり、これから後の山岳ステージで、アルやバルデがフルームにそれ以上の差を付けられるかどうかが焦点になります。特にバルデは久々に総合争いに加わったフランス人選手だけに、これから観客の後押しやマスコミの援護が凄い事になりそうです。

とにかく、今年のツール・ド・フランスは近年になく最後までハラハラさせるエキサイティングな展開になってくれそうなのが嬉しいですな!