「2人の”潤滑油”によって活性化されたナイスゲーム」J1第16節 柏レイソル-コンサドーレ札幌

J1で単独首位を快走している柏レイソルと、スタートダッシュには成功したものの5連敗で降格圏が目の前のコンサドーレ札幌という対照的なチーム状況という事で、試合前はホームの柏が圧倒するかに思えたのだが、意外に拮抗した好ゲームであった。

柏のフォーメーションは4-2-3-1で、札幌は3-1-4-2という形。アウェイの札幌は、守備時には5バックになって2トップはボールが自陣に入るまでは全く動かず、柏はDFラインがフリーにボールを持てる状況で、高い位置取りをするSBを基点にして、1トップのクリスティアーノとトップ下の中川寛斗が3バックの両側のスペースへ飛び出してパスを引き出し、序盤から柏が主導権を握る展開。

しかし最初のチャンスは札幌だった。前半6分に、左サイドでの展開から兵藤がポストプレイでボールを落とし、ヘイスからまた兵藤に縦パスが入り、シュート態勢に入るもわずかにトラップが短くてDFにカットされる。札幌は、都倉のポストプレイとヘイスのテクニック、兵藤の幅広い攻撃参加によって良いカウンターの形が出来ている。

そして柏も、わずか155cmの身長で「Jリーグ史上最小の選手」と呼ばれる中川寛斗が、何度も前線で細かい動き出しを繰り返して攻撃を活性化させ、28分にはファーへのクロスを武富が頭で折り返し、ニアに飛び込んだ中川が頭でそらすもポストをわずかにかすめるなど、惜しいチャンスを作り出す。

拮抗した試合の中で初めてスコアが動いたのは前半42分、ゴール前での混戦から抜け出そうとした武富を、横山が後ろから襟を掴んで倒してしまいPK。クリスティアーノがこれを落ち着いて決めて柏が先制点をゲットする。札幌も、直後の44分にヘイスがトラップで交わしてからのクロスを走り込んだ宮澤が合わせるも、ゴールマウスに入っていた中谷が足で止めて同点ならず。

ビハインドを負った札幌は後半からラインを押し上げて攻勢を強め、3分にアーリークロスから都倉が放ったヘッドは柏GK中村の好セーブに遭ったが、立て続けにFKのチャンスを作ると、後半16分にPAやや左前の地点からヘイスが放ったFKが、壁の間を通って直接決まり、とうとう札幌が同点に追いつく。

後半19分に、柏は中川に代えてディエゴ・オリヴェイラを投入し、4-4-2にして前線のターゲットを増やしたものの、かえってクロスだけの単調な攻撃になってリズムが悪化したように見えたのだが、43分にそのオリヴェイラが右サイドへ飛び出したところにスルーパスが渡り、切り替えして飛び込んだDFをを交わしてサイドネットにシュートを突き刺すファインゴールを決めてしまう。もはや札幌に反撃のパワーは残されておらず、試合は2-1で終了した。

これで札幌は16位の降格圏に転落、さらにはジュリーニョも大怪我で帰国と非常事態。急遽、元磐田のジェイ・ボスロイドを獲得し、7月からは「タイのメッシ」チャナティップ・ソングラシンが加入するが、彼らの力で今後どれだけ盛り返して行けるか。柏は大津やオリヴェイラを控えに出来るほど前線の戦力が厚く、中盤から後ろもアカデミー出身の選手が着実に成長し、戦力的な穴が見られない。夏場も確実に勝ち点を重ねて行けそうだ。