「果たして、テネリフェと一緒に昇格するのが柴崎にとって幸せなのかどうか」リーガ・エスパニョーラ 昇格プレーオフ準決勝第2レグ テネリフェ-カディス

昨日の深夜に行われ、テネリフェが柴崎の先制点を延長まで守りきり、アグリゲートスコアで1-1のタイスコアに終わったが、プレーオフの規定でリーグ上位のチームであるテネリフェが勝ち抜けを決めたという事で、楽しみにしていた試合だったのだが、いざ実際に見てみると何とも複雑な気分になってしまった。

第1戦でのテネリフェは柴崎がボランチで先発したのだが、この試合は1トップがロサノ、2列目に柴崎、アマト、スソという並びの4-2-3-1。ボランチは守備負担が多くなるし、トップ下だとパスが来ないテネリフェにあっては、やはりSHが柴崎を最も活かせるポジションだとやっと気づいたかと思ったのだが、そう話はうまく行かなかった。

いきなり前半3分に、カディスのCKからこぼれ球をフリーでシュートされるものの、テネリフェGKダニ・エルナンデスが足1本でセーブと、アウェイゴールが致命傷となるテネリフェにとっては冷や汗をかかさせる試合スタート(苦笑)。

カディスはアウェイという事もあってかあまり前線からプレスをかけて来ず、テネリフェのDFはある程度余裕を持ってボールを回せたのだが、組み立てがロサノへのロングボールか、スソやアマトに縦パスを当ててからドリブル突破しか芸が無く、攻撃の幅が狭くて柴崎が全く生きてこない。

柴崎も左に張るだけじゃなくて、いろいろポジションを変えて動き出しを工夫しているのだが、テネリフェは全体が間延びして選手1人1人のボールを持つ時間が長く、左SBのカミーユは無理なドリブルやキープで2度も危険な失い方をする始末で、アマトは相変わらず自爆ボールロストを連発してコンビネーションどころではない。

それでもテネリフェは徐々にカディスを押し込み、前半20分には大きく外してしまったが柴崎の直接FKなど、圧倒するほどではないが前半途中からセットプレイの機会が増えて来る。そして34分に、テネリフェは右サイドでの展開からスルーパスに抜け出したスソがクロス、これがゴール前を通り過ぎてファーで待ち構えていた柴崎の前に転がり、コースは無かったが落ち着いてニアに決めてテネリフェが先制点をゲットする。

後半になると、当然カディスが前に出て来てセカンドボールを支配、柴崎も相手のSBにマークされて身動きが出来ず、テネリフェがズルズルと自陣に押し込められる展開が続く。カディスの攻撃はテネリフェと違ってちゃんと味方がフリーな選手を認識してパスを繋ぐのに対し、テネリフェはとにかくロサノもスソもアマトも前を向いたらドッカンシュートを打つことしか頭に無い。

しかしカディスも疲れからか後半25分を過ぎるとプレスの勢いが落ち始め、柴崎がヒールから抜け出そうとしたところでファールを受けたり、後半43分にはテネリフェの中で唯一柴崎と分かり合えてそうなティロネとのダイレクトパス交換でPA内に攻め込むなど、ようやくテネリフェが柴崎を中心とした攻撃で勢いを見せ始める。

延長に入っても、カウンターから柴崎が抜け出してダイレクトクロス、自陣から柴崎が中央をドリブルで持ち上がって展開、ヒールで落としてからカットされたがスルーパスなど見せ場は多く作るものの決められず、逆にカディスにCKからフリーでヘディングを打たれたり、延長後半はパワープレイから決定的なシュートを浴びるものの、相手のシュートミスやGKダニ・エルナンデスの好セーブで何とかリードを守りきって試合終了。

これでテネリフェはプレーオフの決勝に進出を果たしたのだが、相手のヘタフェはリーグ上位で、しかもプレーオフ準決勝はウエスカに90分で3-0と圧勝、日程の間隔はテネリフェが中2日に対して1日多くあり、どう考えてもテネリフェの劣勢は動きようが無く、よほどの奇跡でも起こらない限りはテネリフェの1部昇格は厳しいように思う。サポーターは試合後にピッチへ流れ込んでいたが、早漏にも程があるよね(笑)。

準決勝の2試合を見ても、敗退したカディスのほうがよほど柴崎に合ったコレクティブなパスサッカーをしていて、確かにテネリフェが柴崎を大切に考えてくれている事は大変有り難いが、柴崎の将来を考えたらたとえ1部に昇格しても、そのままテネリフェに残る事が本当に正しいのかどうか。柴崎によってチームを根本的に変革させるという可能性も無いわけじゃないが・・・さて本人の選択やいかに。