「久保君が後退しているんじゃない、皆が前進しているのだ」U-20ワールドカップ ベスト16 日本-ベネズエラ

グループリーグを3位で突破した日本がベスト16で対戦した相手は、グループBを10得点無失点の3連勝という圧倒的な強さで1位通過したベネズエラ。

しかし日本は、前半28分に堂安のFKがクロスバーに当たり、その跳ね返りを岩崎がシュート、40分にはクロスをニアで合わせた高木のシュート、後半12分にも堂安のスルーパスから高木という決定機がありながらモノに出来ず、後半途中から久保が出場するも、チーム全体の運動量が落ちてしまって前線で基点が作れなくなり、何とか90分を持ちこたえるも延長後半にCKからヘディングを決められ、これが決勝点となって敗戦、日本の挑戦はベスト16で終了してしまった。

午後5時のキックオフと言う事で、結果を知ってから試合を見てみたのだが、予想以上に互角な内容だったのには驚いた。南アフリカやウルグアイを相手に、あれだけおっかなびっくり、いっぱいいっぱいでビルドアップしていた守備陣が、ウルグアイのハイプレスに対して一歩も引かず、堂々とワンタッチでパスを回し、ゾーンの間に引いて来る三好や堂安にスパスパと縦パスを通していた。

最後は冨安がマークを外してヘディングを決められてしまったが、守備陣は最後まで安定したプレイでベネズエラに多くの決定機を与えなかった。特に日本はSBの守備がずっと穴だったが杉岡も藤谷も粘り強く守り、今大会で日本の守備陣は本当に成長したと思う。それだけに、あと1試合でも多く経験を積ませてあげたかったのが残念で仕方ない。

それに比べると攻撃陣は少し残念だった。小川の代わりに出場した田川や高木は前線で基点になれず、三好と遠藤は相手のフィジカルとリーチをなかなか打ち破れず、岩崎は運動量では頑張ったがプレイが雑で数々の決定機を決められず、日本の攻撃陣で頼りになったのはほぼ堂安のみ。堂安は最初の2戦では判断が遅くて視野が狭く、ぶっちゃけ期待はずれに思えたが、イタリア戦から見事に化けてくれた。この夏には間違いなく、海外からオファーが届くことだろう。

久保君もベネズエラ戦ではパッとしなかったが、これはそもそもの出来が悪かったのもあるが、それだけ周りのレベルが上がったという事でもある。孫正義氏の「髪の毛が後退しているのではない。 私が前進しているのである」という名言に例えると、「久保が後退しているんじゃない、皆が前進しているのだ」というところだろうか(笑)。

ここでも常々、日本の若手には経験と戦術が足りないと書き続けているが、相変わらず協会はそれを補う監督を据えるのではなく、選手よりも経験や戦術が足りない人を仲良しグループのたらい回しで監督に起用し続けており、今回の内山監督もその例に漏れなかった。

明らかに攻守が連動した戦術を構築する能力に欠けていて、小川の代わりとなるセンターフォワードを用意しておらず、坂井大将を不動のキャプテンとして中心に据えていたのに後半戦では起用せずと、世界との物差しも持っていない事を露呈した。その足かせを考えたら、選手は本当に良くやったと言える。結果は悔しいだろうが、胸を張って帰って来るべきだ。東京五輪に向けて、今度こそまともな監督の下で鍛えられる事を願いたい。