「札幌の完成度が高い大陸サッカーに、居場所が無くなりつつある小野の悲哀」J1第11節 コンサドーレ札幌-ガンバ大阪

今期序盤戦のJ1で、トピックを1つ挙げるとすれば「昇格組の大健闘」という事になるだろう。

J2の4位からプレーオフで上がって来たセレッソは首位争いに加わっているし、清水も札幌も降格圏の上をしっかりキープしている。その中でもホームで無敗を継続している札幌が、ACLでグループリーグ敗退が決まったガンバを迎えてどんなサッカーをするのかに注目して試合を見てみた。

札幌のフォーメーションは3-1-4-2で、戦術的にはとにかく堅守速攻。守備時は5バックで分厚く守り、ボールを奪うと戸倉と金園のツインタワーの走り出しにロングボールを合わせ、兵藤ら中盤がセカンドボールを拾ってサイドへ展開、そしてクロスをツインタワーに合わせるというスタイル。戦術も人選も玉虫色で曖昧な事が多いJリーグチームにあって、ここまで明快な大陸サッカーをやってくれると清々しい。

対するガンバは、今野が抜けてから機能不全に陥った3バックは止めて、井手口をアンカー、遠藤と藤本がインサイドハーフ、倉田がトップ下に入った中盤ダイアモンドの4-4-2にして来た。あちこち動き回ってボールを触りたがる遠藤にとっては、守備タスクが多いアンカーよりもインサイドハーフのほうが明らかにやりやすそうで、札幌のアンカーの脇にあるスペースに入って攻撃を引き出して行く。

そんな感じで、どちらも自分たちの持ち味を出して序盤から攻め合う時間帯が続いた後、徐々に流れはセカンドボール争いで優位に立つ札幌に傾いて行くものの、ラストプレイの精度がイマイチでチャンスを作るまでには至らない。前半36分にCKから菅のシュートは枠の外、42分には左サイドへの展開からクロスを折り返して都倉がフリーで打つもGK正面と、ようやく前半の終わりごろに決定機が訪れるがこれも決められない。

逆にガンバは前半終了間際、遠藤からパスを受けた藤本が長沢とワンツーで抜け出し、ドリブルで持ち込まずそのままダイレクトでゴール左隅に技アリのミドルシュートを決めるという、電光石火の攻撃で先制点を奪ってしまう。

後半からはいきなり札幌が猛攻を仕掛け、6分にはサイドを抜け出した都倉のクロスからこぼれ球を菅がシュートを打つもファビオがクリア、10分にも同じようにクロスから菅がシュートを放つが今度は井手口がゴールライン上でクリアと、ここでも札幌は決定機をモノに出来ない。

ガンバはアデミウソンを投入して前線での基点を作る一方、札幌は後半30分に小野を投入するがなかなかボールに触れず、32分にセットプレイの流れからのクロスを都倉がヘディングでゴールネットを揺らすもオフサイド。これ以降、札幌のチャンスメイクは激減し、試合の流れはガンバのほうに傾き始める。

そして後半44分に、中盤でボールを奪ったガンバがハーフカウンター、遠藤からパスを受けたアデミウソンのラストパスがDFのスライディングをすり抜けて泉澤に渡り、これを落ち着いて決めてガンバが2点目。これで試合は決まってしまった。

コンセプトや戦術の浸透度はもちろん、試合内容自体も札幌のほうが上回っていた試合ではあったが、決定力と選手層の厚さがガンバに勝ち点3をもたらした試合だったかなと。しかし小野はこういうサッカーをやるチームに居てもあまり意味がないように思うのだが・・・タイのメッシことチャナチップ・ソングラシンも加入したが、彼はまだウイングバックで使えそうではあるけどね。