「個人能力ショーと化したエル・クラシコを最後に飾った、千両役者の見事な復活劇」スペイン・リーガエスパニョーラ第33節 レアル・マドリー-バルセロナ

ともにミッドウィークでチャンピオンズリーグを戦った直後のエル・クラシコ。レアルは120分の延長戦をこなして中4日、バルサはユーベに負けて中3日でネイマールが出場停止と、メンタル面とレアルホームという地の利を含めて考えればレアル優位と見るのが普通だが、リーグ戦でレアルから1試合少ない状態で勝ち点3の差を付けられている、崖っぷちのバルサがどういう試合を見せるのか。

フォーメーション的には一応は両方共4-3-3の形だが、バルサは守備時にネイマールの代役で入ったアルカセルがSHに下がり、メッシが前残りする4-4-2で3ラインのゾーンを組む形になっている。とは言え、スアレスとメッシではDFへのプレスは不十分で、前半15分頃からレアルがロングパスからベイル、ベンゼマ、クリロナがチャンスを作ってレアルが優勢に試合を進める。

が、この試合でメッシをマンマークするタスクを与えられていたカゼミロが、12分にメッシのフェイントで抜かれて後ろから倒してしまい早くもイエロー。ユーベのように複数人でメッシを囲むのではなく、カゼミロ1人で抑えようとしたジダン監督の戦略だったが、ここがある意味この試合のキーポイントだった。

レアルは28分に、クロースのCKが流れたところをマルセロが拾ってクロス、バルサの守備はラインを上げたがファーサイドで2人がフリーになっており、セルヒオ・ラモスのシュートはポストに当たったが、これをカゼミロが押し込んで先制点をゲットするが、わずかその5分後、ブスケツから右サイドのラキティッチに縦パスが渡り、折り返しを中央で受けたメッシがそのままドリブルでレアルの選手4人を一瞬で置き去りにするスーパーゴールを決めてバルサが同点に追いつく。

後半の序盤は前半と同様にレアルが押し込み、8分にマルセロのクロスを至近距離からベンゼマがヘッドで叩きつけるも、バルサGKテアシュテーゲンが足だけで弾くスーパーセーブ。バルサも11分にカゼミロのカットミスを拾ってアルカサルがPA正面でシュート、13分はCKからピケがヘッドを放つが、レアルGKナバスがこちらも連続ナイスセーブと譲らない。

このあたりから、どちらも運動量が落ちて中盤でプレスがかからずサイドに常時展開され、ある意味クラシコらしい、スターたちの個人能力ショーの意味合いを呈してくる。が、その分調子の良し悪しが残酷に表れてしまい、ベンゼマやスアレスはボールが上手く足に付かずプレイの精度を欠き、クリロナも最後の部分で踏ん張りが効かずシュートがコントロールできない。

そんな感じでチャンスの数の割にスコアは動かなかったのだが、27分にこれまで精細を欠いていたラキティッチが、カットインからコントロールされたミドルをファーサイドに決めてバルサが再びリードすると、32分にはセルヒオ・ラモスがメッシに両足裏を見せるタックルを見舞ってしまい、メッシ自体はジャンプで避けたのだが審判の判定は一発レッド。

ここからバルサは、特にマルセロの上がりを警戒してラキティッチをSBまで下げた、6-2-2の形でゴール前に壁を築いて逃げ切り体制を図るのだが、ベンゼマと交代したハメス・ロドリゲスが、後半40分にマルセロのクロスをニアゾーンへ飛び込んで合わせ、レアルがかろうじて同点に追いつく。

試合はこのまま同点で終わるかと思われたのだが、ロスタイムも2分に入ろうとしたラストワンプレーで、セルジ・ロベルトが自陣から強引にドリブルで持ち上がり、マークに戻ったマルセロをそのまま振り切ると、アンドレ・ゴメスからジョルディ・アルバへとパスが渡り、右サイドから中へ入って来たメッシがグラウンダーのクロスをきっちり合わせてニアに決め、その直後にタイムアップ。バルサがメッシの劇的な勝ち越しゴールで、優勝に望みを繋ぐ大きな勝利をクラシコで飾った。

チャンピオンズリーグのユベントス戦では全くダメダメだったメッシが、クラシコでは突然蘇って千両役者ぶりを見せつけた格好になったわけだが、その陰で前節のリーグ戦で2ゴールを挙げていたイスコを起用せず、怪我明けで絶不調のベイルを先発させてまた怪我をさせてしまい、メッシのマンマークを任されて早々にイエローをもらったため、後半にカゼミロを下げざるを得なかったジダン監督の采配には疑問が残る。レアルにとっては後を引きそうなこの試合結果が、果たしてリーグ戦にどういう結末をもたらすのだろうか。