「”絵に描いた餅”戦術と”調子だけで決める”人選が表したトゥヘルの限界」UEFAチャンピオンズリーグ 準々決勝第2レグ モナコ-ボルシア・ドルトムント

ドルトムントホームでの第1レグを2-3で落とし、敵地で2点差以上の勝利が必要だったドルトムントだったが、第2レグでは前半20分までにいきなり2失点を喫してしまい、モナコを追い詰めるところまで行かずに敗退という屈辱を味わってしまった。

バス爆破事件があった影響なのか、モナコでも試合前に警察によるバスの足止めを食らい、メンタル的にも難しい面が多かったのは事実だろう。そういう場合、経験豊富なベテランを中心にしたメンバーを選び、慣れ親しんだ戦術でしっかりと試合に入るのが常套手段だと思うのだが、トゥヘル監督が採った策は全くの正反対で、怪我明けのドゥルムをいきなり先発で起用、フォーメーションは3-4-3で3バックはソクラティス以外はSBが本職のメンバーで臨んだのだ。

珍しくトゥヘル監督が自身の采配を反省していたようだが、そのドゥルムがメンディにドリブルでぶち抜かれて痛恨の先制点を与え、2点目はギンターがあっさりとファルカオのマークを外し、3点目はピシュチェクの自陣でのパスミスからと、守備面で不安を抱えていた選手が見事に失点の原因になってしまった。

そして今回も懲りずに採用した3バック。確かに、今期のリーグ戦でドルトムントがバイエルンとライプツィヒを破った試合はどちらも3バックのフォーメーションだったが、実質的には相手にボールを支配されながらもカウンターで点を取り、5バックにして守りきったような試合なので、守備を固めてカウンターを狙うモナコの場合とは全く違うタイプである。

ドルトムントはリーグでそれなりの結果を出しているが、ここまでの失点はバイエルンの倍以上を喫しているのを見ても、単に相手の守備力をドルトムントの攻撃力が上回っていただけで、ドルトムントの3バック+ヴァイグルが相手のカウンターにあたふた振り回され、でも相手のシュートミスで助けられるというのがパターンだったのだが、今回のモナコは外してはくれなかったというだけの話である。

CBの両サイドにSBの選手を起用して、CBにも攻撃参加させるトゥヘルの戦術は、バイエルンでCBにキミッヒやアラバを起用したグアルディオラへのコンプレックスを感じさせるが、それはバイエルンの安定したパスワークやレヴァンドフスキのポストプレイがあってこそであり、どちらも存在しないドルトムントでやってしまったら単なるザルになるのも当たり前だ。

前半の27分でドゥルムに代えてデンベレを投入し、フォーメーションを4-2-3-1に変更した事でようやくドルトムントも落ち着いて試合を運べるようになったが、既に相手は2点を取ってスペースを埋めていたので、オーバメヤンが活きる場面はほとんど生まれず、香川もボールタッチは好調だったが、攻撃が渋滞すると近くのロイスらと無駄にパス交換したがる「自分たちのサッカー」症候群が首をもたげ、結局ドルトムントの得点はデンベレのドリブルからロイスが合わせた1点のみ。

ドルトムントは後半27分にプリシッチを入れてデンベレをインサイドハーフに下げたのだが、これもまたトゥヘルの悪手で、サイドでは相手の脅威になっていたデンベレが中央ではロストマシーンに変貌、試合のリズムが悪くなってそれでも前がかりになっていたところで、無理なピシュチェクの持ち上がりから3失点目。これで試合は事実上終了、ドルトムントはトータルで6-3の完敗に終わってしまった。

ここに来て香川はドルトムントとの契約延長の話が出だしているが、まるでラニエリのようにコロコロと選手と戦術を弄ってベースを作れないトゥヘル監督の元にいても、あまり得られるものは無いのではないかと思ってしまう。先入観無く良い調子の選手を起用するところはラニエリと違う美点ではあるが、おそらく次の移籍で海外では最後のチームになるのだから、香川には本当の名将の元でプレイして欲しいと思うのだ。