「ミラクル・レスターの長い物語、一瞬の隙にてあえなく終焉」UEFAチャンピオンズリーグ 準々決勝第2レグ レスター・シティ-アトレティコ・マドリー

アトレティコホームでの第1レグを1-0で落とし、レスターが逆転を狙ってホームで迎えたチャンピオンズリーグ・準々決勝の第2レグ。レスターはヴァーディと岡崎を前線に並べたベストメンバーの4-4-2で、アトレティコももちろん同じ4-4-2のマッチアップとなった。

試合は、レスターを組織の練度と個人のテクニックで上回るアトレティコがペースを握る。アトレティコはカウンターサッカーを得意とするがボールを持てるのも強みであり、レスターも何とか岡崎が中盤に下がってポストをこなして攻撃を繋げようとするのだが、相手のプレスが凄まじく早く、岡崎自体はそれほどミスは無かったが、そこから先できっちり阻まれてレスターはなかなか攻撃の形を作れない。

前半唯一と言っていいチャンスは、21分にヴァーディのサイド突破からの折り返しを岡崎が合わせたシュートだったが、岡崎はシュートのタイミングで体を寄せられ、かろうじてアウトに当てただけでボールは枠の外。レスターはこれで勢いが出てしまったのか、そこからアトレティコを押し返す時間帯になったのだが、そういう時こそ落とし穴に嵌まってしまうもの。

26分にドリンクウォーターとマフレズがどちらも攻め上がってしまった時にカウンターを食らい、左サイドへボールを展開されると慌てて戻ったマフレズのカバーが遅れ、SBのフェリペ・ルイスがフリーでクロスをファーに上げると、右サイドにいたフクスとオルブライトンがマークのお見合いをしてしまい、サウールがゴールにファーサイドに狙いすましたヘディングを決めてアトレティコが先制点をゲットする。

アウェイゴールを決められ、逆転には3点が必要になってしまったレスターは、後半から岡崎とベナルアンを下げて、ウジョアとチルウェルを投入、実質的にヴァーディが1トップでウジョアとマフレズのウイング、チルウェルが左WBになった3-4-3のフォーメーションにして来た。リーグ戦でもやった事がないまさかの3バックで、ティンカーマンのラニエリもビックリな奇策かと思ったのだが、これで一気にレスターペースになったのだからシェイクスピア監督の手腕は本物である。

アトレティコのコンパクトな4-4ゾーンの外側でチルウェルがフリーになって、レスターはサイドで数的優位が作れるようになり、後半16分には右サイドからのアーリークロスが流れたボールをチルウェルがシュート、ボールは相手に当たって中央へ転がり、それをヴァーディが押し込んでレスターが同点に追いつく。これで一気にスタジアムは盛り上がり、20分にはスローインからウジョア、22分にはマフレズがPA内から決定的なシュートを放つが、どちらも相手に当たってゴールならず、30分のマフレズが蹴ったFKもわずかに枠の外。

その後はレスターの勢いもやや落ちて、アトレティコもカウンターのチャンスがいくつかあったものの試合はそのまま動かず1-1のドローで終了、アグリゲートスコアでアトレティコが2-1で上回り準決勝進出、レスターの長かったミラクル物語はここで終了してしまった。

レスターにとってアトレティコは完全な上位互換で、下手をすると相性的にドルトムントよりも勝ち目が無い相手だと思っていたのだが、アトレティコが意図的に引いたとは言え、後半にここまで相手を圧倒できるとは思わなかった。それだけに、前半に一瞬のスキを突かれてアウェイゴールを与えてしまったのが本当に悔やまれる。

これでもうレスターと岡崎がチャンピオンズリーグの舞台に立つことはないのだと思うと寂しいが、それでもスターを掃いて捨てるほど集めたイングランドのビッグクラブ勢が次々と敗退する中で、唯一ベスト8に残ったのは本当に立派である。監督の手腕は間違いないのだから、来期はまた有望な選手を補強して二度目の奇跡を目指してもらいたい。