「まるで手負いの虎のように、”飢えたプレイ”を見せ続けた武藤」ドイツ・ブンデスリーガ第29節 マインツ-ヘルタ・ベルリン

一時は7位まで上り詰めたのに、現在5連敗の15位とすっかり残留争いの渦中に取り込まれたマインツと、これも以前はCL争いをしていたのに今ではEL圏内も怪しくなりつつあるヘルタとの試合は、やはり両チームの状態を表すような、何とも煮え切らない展開となった。

ドイツの試合を見ているといつも不思議なのは、普通はリーグ戦も終盤になるとある程度は戦術がこなれて攻撃の形というものが出て来るはずなのだが、一握りに過ぎないCL常連の強豪を除けば、どんどん悪くなる一方というチームが本当に多い事である。で、降格圏内で必死に戦っているチームにあっさりと負けてしまう毎度のパターン。

この試合のヘルタはまさにその典型で、何をそんなにビビる必要があるのか最初から自陣にベタ引きで、SBが全く上がらず右SHで先発した原口は、ほとんど自陣に張り付いたままで守備時は6バックのようになり、たまにボールを持ってもハーフラインまでドリブルで勧めば良い方。当然、前線のイビシェヴィッチとカルーは孤立してカウンターのチャンスすら作れない。前半は、何とマインツのシュートが10本に対してヘルタはゼロという体たらく。

しかしマインツもそんな及び腰のヘルタを攻め切れない。ヘルタの前線がDFラインに全くプレスをかけないので、本来なら自由にビルドアップが出来るはずなのだが、ボランチが足を止めたままで組み立ての連動性が無く、CBから中へボールを出してもあっさりミスパスになって奪われてしまう。と言うわけで、マインツの組み立てはほとんどが前線へのロングボール頼み。

それでも4-4-2の2トップで先発した武藤は、そんな味方を助けるべくガンガンと前に飛び出し、前線で体を張ってボールをキープしようとするのだが、周りがそれに対応できていない。コルドバは武藤のそばに居ても足を止めているだけで、コンビネーションを作ろうとする意識が無いし、2列目のラッツァらもバイタルでもパスワークに興味は皆無で、ひたすらドッカンシュートを狙うばかり。そのうち味方に見切りを付けたのか、武藤までもゴリゴリ合戦に参加する始末。

このままベタ引き&ゴリ押しサッカーで前半の45分が終わってしまうかと思ったのだが、ロスタイムにCKからのこぼれ球をラッツァがミドルシュート、これがヘルタDFブルックスの頭に当たってコースが変わりゴールイン。圧倒的に攻め続けながらヘルタを崩せなかったマインツに、思わぬ形で先制点がプレゼントされる。

後半になるとさすがに先制されたヘルタも攻撃的になり、SBが上がるようになって内側に入る原口とのコンビネーションでサイドを攻められるようになるが、エンジンがかかって来た後半15分で残念ながら原口は交代。しかしヘルタのペースもそれほど上がらず、逆にマインツがカウンターからチャンスを作るようになり、武藤もPA左からこの試合初シュートを放つがGKにブロックされる。

試合も終盤になって、そろそろクローズの事を考えても良い時間帯になっても、武藤の結果への執念は凄まじく、クリア気味のロングパスに全速で走り込みファールをゲット、ロスタイムには右サイドのクロスに反応してボレーを放ち、さらにルーズボールを競り合って痛そうにするなど、まさに燃え尽きんばかりの勢い。手負いの虎という言葉があるが、疲労した状態で無理をすると、また怪我の手負いに戻ってしまうので、もっと落ち着けと言いたくなってしまった。

ともかく試合はマインツが1-0で勝利、5連敗を抜け出して何とか降格圏に落ちることは免れたが、同じ勝ち点のアウグスブルクもケルンに勝ったので状況は変わらず。さらに次節はアウェイでのバイエルン戦なのでマインツは極めて厳しいが、何とか奇跡が起こってくれないかな・・・