「整えど整えど猶わが暮らし楽にならざりぢっと手を見る by 長谷部誠」ドイツ・ブンデスリーガ第22節 ヘルタ・ベルリン-フランクフルト

奥寺康彦氏が持つ日本人ブンデスリーガ1部の出場記録234試合に並ぶ、長谷部にとってのメモリアルゲームになったヘルタ戦だが、フランクフルトには怪我人と出場停止が続出、レギュラーのCB2人、ボランチが1人いないという非常事態で迎える羽目になった。

そんな苦しい台所事情の中でフランクフルトが選んだ策は、何と3バックの左右CBにオツィプカ、チャンドラーというSBが本職の選手を起用、長谷部がアンカーという3-1-4-2という形であった。ヘルタのフォーメーションは4-2-3-1なので、普段は1トップであれば4バックにして数的優位のマッチアップにするニコ・コバチ監督にしては珍しい起用法である。

試合が始まると、その狙いがはっきり見えた。3バックと長谷部の4人でヘルタの前線4人を完全にマンマークで抑え、マイヤーではなく守備が出来るセフェロヴィッチとレビッチで前からプレスをかけ、ラインを高めに設定して自ゴールから遠ざけ、急造CBの高さや連携不足をスピードで補うというプランである。この罠にヘルタは見事に嵌まり込み、前線で基点が作れず何と前半35分までシュートを1本も打つことが出来なかった。

逆にフランクフルトは、29分にレビッチがスルーパスを受けてGKと1対1になるビッグチャンスをレビッチが作り、その直後にもCKから長谷部がコースにヘディングするなど、ヘルタGKヤーステインの好守もあって得点にはならなかったが4本のシュートを放ち、前半は完全にフランクフルトのペースだったと言える。

ヘルタもただ手をこまねいていただけではなく、前半の終わり頃から原口らSHが下がってボールを受け、そのスペースにSBがオーバーラップする形で、フランクフルトのマンマークを剥がす攻撃を見せ始めると、後半からは攻撃時にアンカーが下がって3バックのようになり、SBが上がってSHと高さで並ぶ、3-2-4-1のような形を取ってフランクフルトのWBを5バックの位置にまで下げさせ、ポゼッションを優位にする策を取って来た。

そして後半7分、左サイドのカルーがダリダと入れ替わって中に入り込むと、マークに付いていたチャンドラーが一瞬マークを外してしまい、そこにオフサイド気味ではあったがシュタルクからのスルーパスが渡り、カルーの突進はDFに阻まれたものの、こぼれ球をイビシェヴィッチが押し込んでヘルタが先制点をゲットする。

こうなると前半とは全く逆の形で、ヘルタがフランクフルトの攻撃陣にしっかりマークを付けるマッチアップになり、原口もバレラからブルムへと交代してサイドを強化するフランクフルトの攻撃に合わせて守備に回る機会が多くなる。が、後半33分にセットプレイの後で、セフェロヴィッチがボールが無いところで肘打ちをしてしまって一発退場。

10人になっても攻めざるを得ないフランクフルトに対して、ヘルタは38分にセットプレイの流れからプラッテンハルトがミドルシュート。これはGKがセーブしてクリアしたものの、それを拾った原口からミッテルシュタットへ左に展開、クロスにフリーで飛び込んだダリダが決めてヘルタが2点目、これでフランクフルトは万事休す。第20節から公式戦3連敗になってしまった。

長谷部は3バック前のアンカーという難しい位置で、ダリダをマークしつつ左右のスペースへ入り込むカルーや原口にもカバーして自由にさせないなど、前半はとにかく守備を整えまくっていたが、後半は味方のミスやラフプレイ、判定に泣かされて立て直しきれず。せっかくの記念すべき試合なのに悔しい結果になってしまった。また出場停止の選手も増えてしまったので、メンバーが揃うまではひたすら耐えるしか無いね。