日本にとって真の「クラブ」は、まだ大学サッカーにあるのかもしれない

相変わらずDAZNはサウサンプトンのFAカップやリーグカップをやってくれない使いなさなので、昨日はスカパーで再放送している「Jのミライ」という番組を見ておりました。

その中で、大学サッカーをテーマにした回があって、慶応大学ソッカー部を舞台に、湘南で戦力外になって慶応に戻り、またアビスパ福岡、横浜Fマリノスへと旅立った中町選手や、慶応を中退して愛媛に入ったものの契約満了で慶応に新入生扱いで復帰した近藤貫太選手などのインタビューで構成されていました。

Jリーグが発足してから今年でもう25年目。最初の10年ぐらいは、黄金世代を筆頭とした技術に優れた若い選手が活発に世代交代をしていましたが、彼らがレギュラーに定着し始めたころから、トルシエアレルギーが起こって協会が守備や戦術、デュエルを軽視した育成に走り、技術はあっても戦えない若手がベテランを凌駕できなくなり、ユースからJに入った若手が伸び悩むようになりました。

自分たちを振り返れば身にしみて分かるように(笑)、高校で人間的な自立を果たしているような人は変人扱いにされるぐらい、日本において18歳というのはまだ子供で、そんな彼らがいきなりJクラブに入ってあぶく銭をもらい、午前中の練習だけであとは自己管理みたいな立場になってしまったら、よほどプロ意識を持った選手でないと腐るのが当たり前です。

日本の大学は、そんなまだまだ人間的な教育が必要な若手にとっての重要な受け皿になっているのが現状で、特にJリーグバブルが弾けてからは、地方クラブにとって高校出の若手をじっくり育成する予算の余裕が無くなり、即戦力になれる大学出身の選手を獲得する傾向が強くなっています。ようやく近年になって、この面で先行していたサンフレッチェ広島以外にも、Jユースと高校を提携させ、寮を整備するクラブが増えて来ましたが、残念ながらまだまだ少数派です。

さらに慶応大学の場合を見てみると、入部を希望する選手は全員受け入れていますし、歴代のOBがスタンドに勢揃いしてリーグ戦とは別に勝敗に命をかける早慶はまさしくダービーマッチですし、部活の運営は大学の予算、つまり学生からの授業料などで賄われていますし、ソッカー部の先輩・後輩の関係は卒業して社会に出てからもずっと続いていきます。

番組の後半に、最近岩政大樹選手が加入して話題になった、慶応と東大サッカー部のOBで構成された「LB-BRB TOKYO」、
(現「東京ユナイテッドFC」)が紹介されていましたが、東京23区からJリーグを目指すという壮大な目標を推進できるのも、企業経営者、オーナーが多い東大や慶応ならではの人脈、支援があってこそでしょう。

つまり、トップチームの活動だけじゃなくて多くの市民を受け入れ、年を取ってスポーツを離れても地域コミュニティの中心として生活に欠かせない存在であり続けるという意味では、大学のほうがほとんどのJクラブよりも本来の「クラブ」としての役割を果たしているとさえ言えるでしょう。

もちろん、大学のクラブは入学を果たせた人のみが所属できる狭き門であるため、クラブがダメでも大学があれば良いとは絶対に言えません。ただ、日本のサッカークラブにとっては、ヨーロッパのクラブよりも大学のほうが、習いやすいお手本なのではないかという気がするのです。