「戦術も戦力もがっぷり四つの見ごたえある試合を決めた、痛恨のラインミス」イングランド・プレミアリーグ第20節 トットナム・ホットスパー-チェルシー

アーセナルが持つプレミアリーグの14連勝という記録にあと1つまで迫っている首位チェルシーと、4連勝で勝ち点7差の3位につけているスパーズという絶好調同士が対決する注目の試合。

チェルシーもスパーズもフォーメーションは3-4-3。しかしちょっと前までは全てのチームが4バックだったイングランドでさえ、強豪同士が3バックで対戦するようになったのだから、時代はあっという間に変わるものだなと本当に感慨深い。つーか、やっとこさ自国のリーグで4-4-2の基本的なゾーン・ディフェンスが浸透し始めたところという日本は、2周も3周も戦術で遅れを取っている事を実感する。

さて3-4-3のミラーゲームとなれば必ず各ポジションで激しいマッチアップが起こるわけだが、とりわけこの試合のポイントになったのは、スパーズの左WBローズ、チェルシーの右WBモーゼスという売り出し中同士の対決で、この試合についてはローズがキレとスピードでモーゼスを圧倒、鋭い出足でローズを置き去りにする場面を何度か作り出し、スパーズに勢いをもたらしていた。

そしてもう1つのポイントだったのは、カンテとワニャマのアンカー対決。カンテは相変わらずのボール奪取力でチェルシーの中盤を支えていたが、1度ボールキープを奪われて決定的なピンチを作られるなど、スパーズから集中的に狙われて苦しんでいた。そして前半ロスタイムの失点もカンテのパスミスからで、そこからウォーカーが右サイドの高い位置からエリクセンに折り返し、エリクセンのピンポイントクロスをアリが決めてスパーズが先制。

後半になるとチェルシーも反撃、ボールを奪ってから素早くサイドに展開して波状攻撃を仕掛けるが、9分にまたもウォーカーの折り返し>エリクセンのクロス>アリのヘディングという1点目と完全に同じ形でやられてしまう。1点目は、モーゼスがDFラインを崩してオフサイドを取れなかったのが原因だったが、この時はケイヒルとダヴィド・ルイスがラインを上げているのにアスピリクエタだけがアリをマーク、しかも高さで負けて決められるという力負け。

スパーズは2点目を取った後から、ケインとアリを2トップにした5-3-2にフォーメーションを変更、片方のWBがサイドに出てマークしに行くと、残りの4バックがPAの幅を固め、3センターでバイタルをしっかりケアをする強固なゾーンを作り、相手にボールは支配されても決定的な場面を作らせず、チェルシーは最後にバチュアイを入れて3-3-4にしたが得点できず、スパーズが2-0で完勝した。

チェルシーは守備のラインミスがともに失点へと繋がり、エースのジエゴ・コスタが2度ほど良い場面は作ったが、いわゆる彼の日ではなく不発に終わるなど、実力よりも運で負けた要素は大きかったが、カンテのフィジカル、アスピリクエタの高さという弱点をスパーズが研究して来たのも事実で、どこも首位独走のチェルシーに攻略の狙いを定めてくる事を考えると、リーグの後半戦は楽な戦いにはならなそうである。