「日本のユースらしい弱点を露呈してしまった滝川第二」全国高校選手権 準々決勝 滝川第二-前橋育英

ここまで3試合で13得点と圧倒的な攻撃力で勝ち進んできた滝川第二と、優勝候補だった市立船橋を破って無失点で勝ち上がった前橋育英との対戦になった準々決勝。

試合の序盤は、コンパクトなゾーン・ディフェンスから攻撃陣の多彩なドリブルで滝川第二が攻め込む時間帯が続いたのだが、前橋育英が前半24分にロングボールをFW人見に当てて、その落としを長澤がPA内で拾い、滝川第二の選手が後ろから倒してしまってPKで先制点が前橋育英に入ってしまう。

これに味を占めた前橋育英が、長身の人見に次々とボールを放り込み、滝川第二のDFがことごとく競り負けて裏を取られて決定的なピンチを作られた事で、戦況が大きく変わってしまった。

滝川第二は、裏を取られるのを恐れてラインが下がってセカンドボールが拾えず、せっかくボールを奪っても前線までが遠く、仕方なく苦し紛れのロングボールを打つが、滝川第二は前線の高さも無いので基点になれずセカンドボールを以下ループ。

そしてたまに高い位置で前を向いてボールを持っても、相手のプレッシャーの前にいつもよりもプレイスピードを上げようとするのだが、どうしても体勢的に無理なドリブル、無理なスルーパスになってしまって精度が落ち、結局シュートまで持ち込めない。

後半になると完全に前橋育英のペースになり、ロングボールだけではなくバイタルエリアの密集地でも滝川第二の選手がことごとくデュエルで負け、ゴリゴリと突破されてシュートを打たれたり、DFが中央に集まってがら空きになったサイドから決定的なクロスを打たれたりと、GKの奮闘が無ければとっくに大差がついてもおかしくないぐらいに一方的な展開になってしまった。

前橋育英は後半14分にシュートが跳ね返ったボールを正当に押し込んだゴールがオフサイドと誤審されるなど運も無かったが、後半36分にPA内でのデュエルから人見が抜け出したのを滝川第二のキャプテン今井が体を投げ出し再びPK。今井は2枚めのイエローで退場し、これで完全に勝負は決まってしまった。

悪い意味で、滝川第二は日本のユースチームがアジアの国と対戦した時に見せる弱みを見事に体現してしまっており、スペースを与えてくれる相手には攻撃力で圧倒的出来るが、フィジカルとスタミナ、スピード、デュエルに勝る相手だと、途端に技術が発揮できなくなって組織も崩壊、最後はゴリ押しの前に力尽きてしまう。

東海大仰星もそうだが、今年はフィジカルとスタミナを全面に出した攻撃的な守備をするチームが勝ち上がっているが、それをさらに上回るテクニックとパススピードを持ったチームが出てきて、互いに切磋琢磨して向上し合うような大会になって欲しいものである。