「リベロという名前とは正反対に、チームを戦術的に整える長谷部」ドイツ・ブンデスリーガ 第10節 フランクフルト-ケルン

長谷部と大迫がともにチームを牽引し、リーグ4位と7位という成績でのぶつかり合いになったこの試合は、得点こそ1つしか入らなかったが、戦術的に極めて見ごたえのある上位対決らしい試合になった。

フランクフルトは、最近好んで使っている長谷部をリベロとして3センターの中央に置いた3-4-2-1のフォーメーション。それに対してケルンはフォーメーション的にはいつものモデストと大迫を2トップにした4-4-2だが、SHにはリセとラウシュというSBのこなせる選手を置いた守備的な布陣。

試合は序盤から戦術的なミスマッチを利用してフランクフルトが攻め込む。ケルンはサイドが守備的な分、2トップが基点になる必要があるのだが、フランクフルトはケルンのポストプレイにガッチリマークを付けてもCBが2人余るのでギャップが生まれず、中盤が薄いのもあって大迫への足元よりはモデスト目掛けた適当なロングボールが多くなってケルンは攻撃のリズムが作れない。

逆にフランクフルトは、攻撃にはWBがFWの位置にまで上がって4トップや5トップのようになって4バックに対して数的優位を作る、Jリーグでも浦和が得意としている形でサイドを支配すると、前半の5分には右WBのチャンドラーがオーバーラップしてフリーな形でクロスを上げ、中にこれまたフリーで飛び込んだガチノヴィッチが頭で押し込み、フランクフルトが狙い通りの形で先制点を上げる。

その後もフランクフルトは、長谷部がドリブルで持ち上がったり、ボランチに入ったオマル・マスカレルのキープや捌きで中盤を支配、そこから何度もサイドからチャンスを作るものの、この試合から復帰したマイヤーにクロスのタイミングが合わなくてなかなか追加点を奪えず前半を終了する。

前半の内容に業を煮やしたケルンのシュテーガー監督は、後半からツォラーを投入して何と3-1-4-2の形にフォーメーションを変更、それまで孤立していたモデストと大迫に、インサイドハーフを経由したボールが入るようになり、大迫は正確なトラップと反転でサイドのオーバラップへと確実にボールを繋ぎ、一気にケルンがペースを握り返す。

後半6分には右サイドからのクロスに大迫が合わせたもののゴールわずか左に外れるねど、ケルンに得点の匂いがプンプンし始めるのだが、この日はエースのモデストがフランクフルトのバジェホにマンマークを受けて封じられ、リベロの長谷部も懸命なカバーリングで奮闘し、その後は押し込まれながらも決定機は作らない。

ケルンは後半25分にギラシを投入、大迫をインサイドハーフに下げてパワープレイ気味のゴリ押しで攻め立て、フランクフルトも長谷部をボランチに上げて守りを固めて矛と盾の戦いになり、後半40分からケルンが怒涛の攻撃を見せてシュートを連発するが、フランクフルトの守備陣が最後まで体を張ってゴールを許さず、試合は1-0から動かずに試合終了。ケルンとフランクフルトはドルトムントと並んで勝ち点18になった。

当然、戦術だけでなくて長谷部がリベロでどんなプレイをするかに注目していたのだが、最も感心した点は守備よりも攻撃面。長谷部がボールを持つと、ほとんど迷うこと無く瞬時にパスを出していて、単に隣のCBへショートパスを出す時も、必ずパスを受ける選手が前に出て受けざるを得ないコースに出すので、そのままサイドへと流れるようにビルドアップが繋がって行く。ボールを持ったら足元で捏ねて、相手も味方も動きようがない短い逃げパスを出す事が多い日本人CBからすると、完全に異質なゲームコントローラーぶりである。

しかも、当然ながら普段はボランチをやっているのでボールを持って上がるタイミングも躊躇なく、攻撃面でのストレスを感じる事が極めて少なく、個人だけじゃなくてチーム全体として見ていて実に気持ち良い。さすがに高さという面では不安はあるものの、日本代表にとっても非常に大きなオプションになると言うか、もっと長谷部をアンカーとして独立させて使う手もあるのではないかと思った。

大迫は相変わらず好調を継続。特にポストプレイについては、タイミングを合わせて足元へボールを入れさえすれば、必ず攻撃を繋げてくれる信頼性がある。代表だとまだコンビネーション的に難しいところはあると思うが、清武からのパスを受けて原口に繋げるような形ならすぐ実現できるのではないかと思う。是非ともサウジ戦で先発の座に立って欲しいね。