「タジキスタンには申し訳ないが、日本にとってはラッキーな相手だった」AFC U-19選手権 準々決勝 日本-タジキスタン

10年ぶりのU-20W杯への出場権がかかる大一番となった準々決勝。相手はグループDの最終戦をオーストラリアと引き分けて2位で上がってきたタジキスタン。日本にとってはプレッシャーのかかる試合ではあったが、ここまでタジキスタンは全試合をほぼメンバー固定、しかも日本より1日短い試合間隔だったのも影響してか、思ったよりも楽に試合を進める事が出来た。

タジキスタンは、オーストラリア戦でスコアレスドローに持ち込んだ時のように、5-4-1の5バックで徹底的にスペースを埋める戦い方をして来て、序盤こそ日本はパスの出しどころが無くて攻めあぐねる展開にはなったのだが、タジキスタンの選手に高さがなくて1対1でもボールを奪う強さに欠けるのであまり怖さが無い。

そして案の定、前半8分にシンプルなロングボールから裏へ抜け出した小川が競り勝ってヘディングを放つと、ボールはポストに当たって跳ね返ったものの堂安が再びそれを拾い、2人で来たマークの間を通すクロスを上げると、今度は小川がフリーで飛び込んで日本が大きな先制点をゲットする。これでタジキスタンも前に出てくるようになって、18分にはカウンター気味の攻撃から三好がクロス、それをまたも堂安が拾って狙いすましたシュートをファーサイドに決めて2点目。

ぶっちゃけ、タジキスタンの能力を考えると前半の2点で試合は決まったも同然で、後半はゴールラッシュが出来るかなと思ったのだが、日本も前の試合と同じメンバーだった疲れもあったのか、後半28分に小川の直接FK、43分には坂井のスルーパスから岩崎がコースに決めて2点を追加したとは言え、内容的にはかなりお粗末な試合運びになってしまった。

まず前線から2トップや堂安が相手のGKやDFラインがボールを持った時に前からプレスをかける事はいいんだけど、後ろが全く付いて来てないのであっさり交わされて中盤で前を向いた状態でボールを持たれてしまう。つーか、それ以前に前線とDFラインが大きく間延びしてしまい、小川のポストプレイに対して縦パスが遠すぎ、相手に追いつかれてあっさりカットされる場面が何度もあった。どこにラインを設定して、全体をコンパクトにするかという組織の意識共有が出来ていない証拠である。

そして初戦から全く変化していないビルドアップの形不足。ボランチは横並びになったままDFからボールをもらう動きが無く、まだ市丸は前を向いてキーパスを出そうという意識はあるものの、坂井はドルトムントでの香川のように相手の中盤に囲まれた位置で漂うだけで、そこでボールを受けてもバックパスしか出来ないだろうという謎のポジショニングとテレフォンパス。どう見てもボランチで使うべき選手ではないのに、そこで常に先発起用されている不思議。

初戦に比べると、DFラインでのパススピード自体がアップしている点は良いのだが、相変わらずSBに渡ったところでボールが詰まってバックパスという場面が多い。ビルドアップからFWへ縦パス、ワントラップで加速してドリブルで抜く、サイドチェンジに走り込んでダイレクトのクロスと、現代サッカー、特に中央を固める相手に対してはSBが完全に攻撃のキーマンになっていて、そういう意味ではA代表もそうだがまだまだ世界レベルからすると物足りない。

準決勝の相手は、バーレーンを1-0で下してU-20Wへの出場権を獲得したベトナム。UAEとイラクのいるグループを勝ち上がり、以前からのスタミナと技術に加え、組織では日本を上回っている相手だけに、タジキスタン戦の後半と同じような間延びした試合ではやられてしまうだろう。ベトナム戦では小川の高さを活かしつつ、ラインをしっかり上げてセカンドボールを拾って連続攻撃に繋げる戦い方をしてもらいたい。